
多様性と包摂性のためのアートの力: 創造的表現を通じて社会を変える
The original English version of the interview can be found here
文化政策とアートマネジメントの専门家である中村美亜先生は、アート(美术?音楽?演剧?身体表现などの创造的表现)が人や社会に変化をもたらすプロセスや仕组みを探求しています。中村先生は首都圏の尝骋叠罢蚕+コミュニティの音楽活动、东日本大震灾后の様々なジャンルのアート活动や认知症の人々のための即兴演剧ワークショップなど、様々な社会的取り组みに积极的に参加し、调査してきました。ケアや社会包摂を促すアートの力を明らかにしようとしています。
※本記事は2024年2月8日、大桥キャンパスの研究室で実施された英語インタビューを翻訳したものです。
※本記事は2024年2月8日、大桥キャンパスの研究室で実施された英語インタビューを翻訳したものです。
今の研究に至った経纬を教えてください。
アメリカでの大学院留学中に、従来の音楽研究にやりがいを见出せなかったことがきっかけです。当时私は、自分のジェンダー?アイデンティティや外国人としてのアイデンティティに悩んでいました。また、差别を数多く経験したので、同じような困难に直面している人たちの力になりたいと思い、様々な支援活动に参加するようになりました。
しかし、社会运动に携わる中で、言叶によるコミュニケーションだけではお互いを十分に理解できないということに気づきました。言叶は明快にメッセージを伝えることはできても、人间の経験の微妙で复雑なニュアンスを伝えることは困难です。そこで重要な役割を果たすと考えたのが、アートのような非言语コミュニケーションです。私たちは、言叶では理解し得ない时にも、アートを通して共感し合うことがあります。
アートは万能ではありませんが、エンパワーメントや多様性?包摂性の问题にアプローチする际に有効な手段になると考え、学际的な研究を行うようになりました。
现在进行中のプロジェクトを教えてください。
现在は、多様な人たちが関わる文化事业の评価について研究しています。

文化事业を评価する际に、アート作品そのものだけを评価することは、その创作过程や社会的影响などを见落とすことにつながります。しかし、创作过程を评価することも容易ではありません。なぜなら、评価の内容をあらかじめ决めてしまうと、アート表现の自由と创造性が制限されてしまうからです。本来アートは创造的で、特定の目的を持たないものです。また、アート活动の长期的な目的が変わらなくても、短期的な目标が明确でないことは少なくありません。
しかしながら、补助金や助成金が投じられる公的な文化事业では、アート活动の评価の必要性を无视することはできません。そこで私たちは、アート活动のプロセスやマネジメントを重视した评価方法を検讨し、评価を通したコミュニケーションの强化やイノベーションの促进、そして最终的に评価を通じてアート活动の価値を可视化することを目指しています。
また、これと并行して、私たちは、认知症の人とその介护者を対象にしたを开催しています。

どのような方法で研究を进めていますか?
対象や目的によって异なりますが、最近は、文化事业者、アーティスト、福祉関係者、医师などの専门家と连携し、実际にプロジェクトに参加したり、ワークショップを企画运営しながら、社会学的手法(観察、アンケート、インタビュー、映像分析など)を用いて研究することが増えています。アートは多义的で曖昧なものと思われるかもしれませんが、私たちはアートの意味を问うのではなく、それが个人やコミュニティにどのように影响を与えるのか、そのプロセスを明らかにしようとしています。
今まで出会ったアーティストの中には、社会にとって重要な活动を行っているにもかかわらず、その価値が十分に评価されていない方々もいました。私は研究者として、彼らの活动を可视化し、より広く周知させるための方法を见出さなくてはならないと考えています。様々な评価方法を试行错误しながら、抽象的で非言语的なアートの価値を共有するよりよい方法を模索しています。
アートを含めた非言语コミュニケーションの役割とその影响について详しく教えてください。
非言语コミュニケーションとは、言语以外の表情、ジェスチャー、音声などで情报や感情を伝えることを言います。日常生活では忘れられがちですが、言叶だけでは伝えきれない感情や意図を効果的に伝える重要な役割を果たしています。私たちは、アーティストと一般の人とのコラボレーションを促进し、非言语コミュニケーションを用いた表现活动の机会を提供することで、本人が気づいていない潜在能力を引き出すことを目指しています。

例えば、3年前から开催している认知症の人とその介护者を対象としたワークショップでは、言叶を理解したり、言叶で自分を表现することが难しい认知症の方々が、即兴演剧的なアプローチを通して、自分の记忆や欲求を表现する场を提供しました。今后も、美术や音楽など、さまざまなアート形式を活用することで、表现を通してより良い人间関係を筑く场を设けたいと考えています。
日常生活では、クリエイティブに自分を表现することを忘れがちです。アートに関わることを通じて、人々が日々の暮らしの中で主体的に考え、行动することの大切さに気付くことができるのではないかと思っています。
また、人生の悩みの多くは、人间関係の难しさから生じています。アートによって、人々が新しい関係を筑く机会が増え、新たな思い出を共有することで、私たちは他者の存在や自分の人生に価値を见出すことができるのではないでしょうか。

海外で留学したり研究したりした経験をお持ちですが、异文化の违いについてどのようにお考えですか?
海外での経験を通じて、文化によってコミュニケーションスタイルが违うことに気づきました。アメリカやイギリスなどの欧米诸国のコミュニケーションは、よりディベート的で论理的な倾向がありますが、日本は、より情绪的で共感的であることが多いです。
例えば、东日本大震灾后のアート活动について调査したことがあるのですが、日本とオーストラリアでは、そのアプローチが大きく异なっていました。オーストラリアでは、直接的な问题解决や募金活动のような実用的な対策が中心だったのですが、日本では、募金活动だけでなく、千羽鹤を折って祈りを捧げるなど、日本の伝统文化を取り入れた共感的なアプローチも数多く见られました。日本は実用的な支援よりも、コミュニティ?レジリエンス(灾害などの逆境に対応し、耐え、回復するコミュニティの能力)や共感的なつながりを重视していることに気づきました。
人工知能(础滨)がアートに使われることについてどう思いますか?
础滨は迅速かつ大量に「アート作品」を生成することができますが、経済的な利益?効率?社会的地位といった外発的な目标に焦点を当てています。利益至上の风潮が强い现代では、础滨によって作られた画像や映像など、効率重视の芸术作品の生成が注目されがちです。しかし、そればかりに目を向けると、芸术の本质が失われ、それによって得られる幸福感や充実感も消え去ってしまいます。
アートには、「作品」という侧面と「活动」という侧面があります。「活动」の侧面は忘れられがちですが、「活动」に取り组むというプロセス自体に価値があり、それが个人や社会にポジティブな影响を与えます。生产性を高めるために础滨が多用される今こそ、アート活动への内発的モチベーションやプロセスをより大切にしてほしいと思います。私たちはアートを通して、个々人の幸福感を高め、一人ひとりの能力が生かされる民主的な社会を育むことを目指すべきです。
ただし、アートは人々にポジティブな影响を与える一方で、人を操る可能性もあり、プロパガンダや商业的利益のために使われることもあります。例えば、広告や世论の诱导のために、アートが利用されるといった场合です。そのため、アートが悪用されないためにある程度のリテラシーが必要です。このようにアートはメリットとリスクの両方があります。础滨に注目が集まる今こそ、私たちはアートを自由な表现の场として活用し、人々の幸福につながる明るい未来を筑くためにはどうすればいいかを真剣に考えていく必要があります。
2015~2020年度にかけての副ラボ长をされていましたが、このプロジェクトについて教えてください。

アートがどのように人间同士の新しいつながりを生み出せるかを研究するため、2015年、芸术工学研究院にソーシャルアートラボ(厂础尝)を立ち上げました。厂础尝では、日本国内外から学生や研究者が集まり、学生が実践的なスキルを身につけ、社会を変える可能性を探求する机会を提供しています。この取り组みは、総合知で包括的で持続可能な社会の実现を目指す、九州大学が掲げる「VISION 2030」にもつながるものです。
2018年には、厂础尝で研究者チームを立ち上げ、文化庁の职员と协力しながら、その后3年间にわたって「社会包摂につながる文化芸术活动のあり方」について検讨を行いました。その结果、アート活动の実践的なガイドと评価の方法に関する3册のハンドブックを日英両方で出版しました。その后、として一般书籍化もされています。(2020年に、厂础尝は社会包摂デザイン?イニシアティブの一部となりました。)

先生のような研究者を志す学生にアドバイスをお愿いします。
Don't follow me!
私や他の先辈研究者の后を追ったり、见习ったりするより、常に时代の変化に目を向けてください。自分の好奇心に従い、物事に情热を抱いてください。学生である皆さんは、面白いアイデアをたくさん持っています。教员である私たちの仕事は、それを実现するための最善のアプローチを提案し、皆さんを手助けすることです。偏见を持たず、柔软性を持ち、情热を学问の道しるべにしてください。
中村教授の研究と厂础尝についての详细は以下をご覧ください。
中村研究室ウェブサイト
ソーシャルアートラボ(厂础尝):
社会包括デザイン?イニシアティブ: