Research Results 研究成果
概要
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)では小惑星リュウグウ試料分析を、6 つのサブチームからなる「はやぶさ2初期分析チーム」および、2 つの「Phase-2 キュレーション機関」にて進めています。
この度「はやぶさ2初期分析チーム」のうち「挥発性成分分析チーム」の研究成果をまとめた论文が、アメリカの科学誌「厂肠颈别苍肠别」に2022年10月21日付(日本时间)で掲载されましたのでお知らせします。
小惑星探査机「はやぶさ2」が地球に持ち帰った近地球轨道小惑星リュウグウの表层および地下物质试料の希ガスと窒素の同位体组成を测定しました。リュウグウには太阳系形成时の希ガスがふくまれており、その量はこれまで报告されているどの陨石よりも多いことがわかりました。窒素同位体组成は试料ごとに异なっており、多様な窒素含有物质が今もリュウグウ试料には保存されていることがわかりました。太阳系形成时の始原的ガス以外にも、银河宇宙线によって生成された希ガスと太阳风起源の2种类の希ガスも含まれていました。多くのリュウグウ试料に含まれる太阳风起源ガスは仅かな量でした。第1回タッチダウン回収试料を10个、第2回タッチダウン回収试料を6个分析しましたが、多くの试料は太阳风希ガスをあまり含んでおらず、2试料だけが现在の轨道でそれぞれ3500年间、250年间の照射に相当する太阳风を含んでいました。太阳风は天体の最表层の物质にしか打ち込まれないため、これらの试料は天体最表层にそれぞれ3500年间、250年间、存在していたことを意味しています。第2回タッチダウン试料は人工クレーター付近から回収しており、地下物质を含んでいると期待されています。第2回タッチダウン试料には太阳风希ガスがあまり含まれていないことから、深さ1-2尘程度の地下物质はあまり撹拌されていないことがわかりました。また、银河宇宙线起源ネオン量から、リュウグウ试料の银河宇宙线照射期间は约500万年であることがわかりました。リュウグウ表面のクレーターには、近地球轨道での衝突で作られたと仮定して计算される年代(200万年から800万年)と、小惑星帯での频繁な衝突で作られたと仮定して计算される年代(10万年から30万年)が提案されてきました。希ガス分析の结果から得られた银河宇宙线照射期间は前者の年代に一致しており、リュウグウは约500万年前に小惑星轨道から、天体表层への陨石衝突が少ない近地球轨道に移动したと考えられます(図1)。
また、リュウグウ试料を真空装置内で100℃に加热した际、100万年の照射期间に相当する银河宇宙线起源のガスが検出されました。このことは、过去100万年间はリュウグウ表层物质が100℃以上の高温を経験していないことを意味します。リュウグウ表层の中纬度域には可视分光で赤く见える物质が见つかっています。赤い物质はリュウグウが太阳に一时期近づいたために强い加热を受けたためにできたという可能性がこれまでの研究で示唆されています。もし、赤化の原因が太阳近傍での加热であるなら、それは100万年以上前の出来事であったことになります(図1)。
?Okazaki et al., 2022a (図1:リュウグウの進化図。1.リュウグウ母天体の形成と先太陽および始原的ガスの獲得。2.リュウグウ母天体での水質変質(約45.6億年前)。3.母天体破片の集積によるリュウグウ形成。4.近地球軌道への移動(約500万年前)。5.加熱による赤化(約100万年以上前)。6.現在のリュウグウ。)
论文情报
原题:
掲載誌: Science
D O I: 10.1126/science.abo0431
公表日: 日本時間2022 年10 月21 日(金)午前3 時(オンライン公開)
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