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虫は嫌い!でも、未知への探究心で媒介感染症の胁威に立ち向かう

Discover the Research vol.6 農学研究院 准教授 藤田 龍介(ふじた りょうすけ)

「虫が関わる研究」そう闻くと、多くの人々は名前を闻いたことがないマニアックな虫をイメージするかもしれません。そんな中、农学研究院の藤田龙介先生はマダニや蚊、ハエのような私たちに身近な虫が媒介する感染症などを研究されています。今回は、人や动物に害を与える虫を研究している理由やその意义について、藤田先生にお话しを伺いました。

人や动物の健康に害を与える虫をやっつける

まずは先生が研究されている分野と研究内容を教えてください。

私が研究しているのは卫生昆虫学で、これは人あるいは动物の健康に害を与える虫をやっつけてやろうという分野です。では、具体的に虫がどのような悪さをするのかですが、一番は病気を运ぶことで、これを媒介感染症と呼びます。有名なのは蚊が媒介するデング热やマラリアなどです。そうした有名な感染症以外にも、世の中には未知の感染症が数多く存在しています。ダニや蚊、ハエなどのいろいろな虫がさまざまな病気を运ぶので、どのような感染症が存在しているかを调べて、その対策を作っていく研究をしています。

先生はなぜ卫生昆虫学の分野に进まれたのですか?

単纯に虫が嫌いだからですかね(笑)というのは半分冗谈で、私はもともと分子や遗伝子などを研究しておりまして、最初に取り扱ったのがウイルスでした。そして、ウイルスを研究するなかでより大きな问题、未知のものを取り扱いたいと思うようになりました。実は、现在発见されているウイルスは全体の0.1パーセントにも満たないのです。残りの99.9パーセントは未発见だと知ったとき、人や动物にとって大きな问题、かつ未知への探究心の両方を満たせる题材はこれだと思い、この分野に进みました。

国内だけでなく海外からのリスクにも备える

卫生环境の整っている日本ではあまり虫が病気を运ぶイメージがないのですが?

吸虫管で蚊を吸い取って集めているところ

これが面白くてですね。戦后、日本は発展していくにつれて卫生环境がよくなり、ワクチンの开発も进められたことで病気のリスクが下がっていき、虫が媒介する感染症は取り上げられなくなっていきました。それにともない研究も缩小されていき、今では虫が媒介する感染症を専门に取り扱っている研究室は日本にほとんどありません。卫生昆虫学という分野に対する需要が少なくなっていったわけです。

ただ、最近はインバウンドが増えてきたことで、海外から感染症が入ってきやすくなってきています。例えば、新型コロナウイルスは记忆に新しいですよね。そこで、私の研究室では海外で発生している感染症が日本に入ってくるリスクはどうなのか。また、もともと日本にあったけれども、まだその存在に気づいていないウイルスがどれくらいあるのかということに注目して研究しています。

ということは、海外の研究者とも连携されることは多いのですか?

そうですね。例えば、中国の感染症の専门机関と连携して情报交换したり、新しい感染症のリスク、未知のウイルスを探したりしています。今后、こういったウイルスが胁威になるのではないのかや、もし中国でこういったウイルスが出たら日本にも入ってくるかもしれないなど、事前に问题を想定して、どのように対策するのかを共同で検讨しています。

フィールドワークから解析まで一気通贯に

先生の研究の特徴や强みなども教えてください。

新种のウイルスを见つける技术ですかね。いろいろな生物が未知のウイルスをもっているわけで、それを见つけて、分离して、その机能を解析する。実际にフィールドで対象となる虫や动物のサンプルを採集してきて、実験室で小さな分子や细胞レベルでの実験を行い、得られたデータをインフォマティクスという情报科学を活用して解析するまで一気通贯にできる研究室というのはあまりないと思います。

トラップでの昆虫调査

虫や动物などのサンプルというのは、どのように採集されているのですか。

私は罠猟の免許をもっていますので、山で動物を捕まえて、動物の体についている虫を採集することもあるのですが、やはり市街地や公園など人と虫がよく接する场所で調査することが多いですね。あるいは家畜の感染症も対象としていますので、畜舎周りで採集することもあります。

山での罠猟は何となくイメージがつくのですが、蚊はどのように捕まえるのですか?

半袖などを着て、肌を露出して公園でぼーっと立っていればいいだけです。そうしたら蚊が寄ってくるので、あとは虫捕り網でぱっと取るっていう。(笑) 基本的に私たちが対象とする虫は向こうから人あるいは動物に近づいてくるものが多いので、捕まえるのは簡単です。

基础研究を実社会にどのようにつなげるのか

これまでの研究で印象に残っているエピソードを教えてください。

まず、ものの见方が大きく変わったのは、ナノバイオロジーを取り扱ったときでしょう。これは细胞の中の遗伝子や分子をさらに细かなものとして捉え、その特性を研究する分野です。生物というのは复雑な动きをしているのですが、それをひも解いていくと根干には论理が存在することに気がつきます。当时、私は指导教员から「研究ではいかに论理的にものを考えることが大切か」を指导いただき、それを今まで大切にしてきました。

また、医学系の研究室にいたときがありまして、动物実験をしたり、临床に携わったりもしていました。実験室での基础研究というのは実社会から离れてしまいがちなのに対して、临床は実社会とのつながりを强く実感できるものです。基础研究を実社会にどうつなげていくのか、この考え方をできるようになれたのは重要な学びだったかなと思います。

兴味や得意は経験することから见えてくる

ゼミの学生にも论理と现実の両面の大切さは伝えておられますか?

ウイルスを精製している写真

そうですね。メッセージとしては伝えています。ただ、それを最初からすべて実践するというのは大変なので、まずは一绪に外に出て、虫取りにいきます。そして、帰ってきたら细胞レベルで実験をするというように、フィールドから実験室での细かい作业までひととおり経験してもらうようにしています。その中でここに兴味があるとか、ここが得意とかが见えてくると思うので、そこから顽张ればいいのかなと思います。

先生は学生たちにどのような人材に成长してほしいですか?

学生たちがどのような人になりたいのか、社会で活跃したいのかはさまざまですので、私からこうなってほしいというのはとくにありません。ただ、ここでの研究者生活をひとつの経験値としてもってもらい、社会の问题に対して自ら考えて、行动できる人材になってほしいです。そしてどの分野でもいいので、自分の决めた道で活跃してもらえればなと思います。

自分の兴味と社会课题の解决の両面を満たしたい

一方で、先生个人としての今后の展望を教えてください。

媒介感染症の分野は、国内では研究が年々缩小してきています。今后、いざ问题が起きたとき、それに対応できる人材がいないかもしれないという问题があります。温暖化やグローバリゼーションが进むことで、海外から感染症が入ってくるリスクはさらに上がっていくことが想定されるでしょう。学生たちがもっと媒介感染症に兴味をもってくれるようにして、この分野で活跃できる人材を辈出していきたいと思っています。

また、个人的には今まで解明されてこなかった未知のウイルスの実态を明らかにしていきたいです。谁も説明できなかったことを自分の力で解き明かすというのが一番楽しい瞬间であります。とくに感染症という分野では人々の健康につながるものなので、自分の兴味の充足と社会课题の解决、その両方を満たせることに取り组みたいですね。

最后に、进路に悩む中高生に何かひと言いただけますか?

兴味は広くもった方がいいでしょう。自分がもっている兴味というのは、その时点でもっている知识で见えるものでしかありません。本当に面白いものというのは、意外に自分が今まで手を出していなかったところとか、见ていなかったところにあったりします。好きなこと、得意なことをもつのは大切ですが、深めていくにつれて最初にもっていたイメージと违っていることはよくあるものです。そのものの本当の面白さがどこにあるのか最初は见えないものなので、何かに関心がある人ほど别のことに目を向けたり、他の学びというのを大切にしたりしてほしいなと思います。

藤田先生の研究の详细については、をご覧ください。