生体亲和性の科学を解き明かす
生体亲和性の科学を解き明かす
2022/05/17
动画作成者
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田中贤
教授
先导物质化学研究所
専门分野
バイオマテリアル
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私たちの身体に备わる数々の防御机能は、危険な微生物や物质を排除すべく、常に戦っています。この防御机能は私たちの健康を保つ一方で、私たちの命を救う医疗机器の开発にとっては障壁となります。
「异物反応や血栓の発生を抑えるには、タンパク质や血液细胞が生体接触型医疗机器の表面へ付着することを防がなければなりません。」と、九州大学の田中贤教授は述べています。
田中教授の研究グループは、医疗机器に用いる生体亲和性に优れた新材料の开発を目指し、その分子构造とメカニズムを解明しています。细胞と材料の相互作用を厳密に制御できる新技术を社会へ还元するために、田中教授は产学连携に取り组んでいます。
素材、材料の持つ生体亲和性の由来を解明する中で、田中教授はそれらの物质に共通する性质を発见しました。
「人体を构成しているタンパク质、糖、そして顿狈础?搁狈础と、日本で承认されている医疗机器に使用されている合成高分子材料に水を含ませたところ、『中间水』と呼ばれる水和状态を発见しました。」
惊くべきことに、极めて复雑な分子が存在する自然界で、単纯な水分子が生体亲和性における重要な役割を果たしていたのです。
田中教授によれば、材料に付着した水は、分子构造?运动性の観点から3つのグループに大别できます。は材料の表面に强く付着する「不冻水」と、材料に弱く付着する「自由水」の间の状态を示します。
田中教授のグループは、中间水は目には见えないものの、他の2つの水分子とは异なる温度で冻ること、赤外线に対しても异なる反応を示すことからその存在を特定しました。中间水は血液细胞やタンパク质が材料の表面とどう作用し合い、付着するかを调整していると考えられています。
田中教授が中间水に関する研究を本格的に発展させたのは九州大学に移ってからですが、医疗机器メーカーに勤务していた顷に偶然にも中间水を含む生体亲和性を持つ素材の开発に携わっていました。
「优れた製品の背景には基础科学がその根干をなしている场合が多いです。优れた基础科学?理论があれば、より良い製品の开発につながります。」と田中教授は语ります。
血液细胞の付着を抑え、血液の凝固を防ぐ働きは中间水の重要な性质です。また、特定の细胞に対する付着性が実现できれば、より広い医疗への応用が可能です。例えば、ステントや人工血管といった。
さらに、田中教授の研究グループはがん细胞と干细胞を选択して付着できる材料の开発に取り组んでいます。肿疡から离れて材料が开発できれば、より早期にがんの诊断を下すことができます。また、田中教授は再生医疗の分野でも、开発した素材を干细胞が特定の组织や臓器に成长するための足场材料として応用することを目指しています。
「医师や医疗従事者、患者は常により良い製品を求めています。そのためには大学における基础研究と公司のものづくりという両者の协力が欠かせません。」と田中教授は强调します。
田中教授は、自らの展望や研究成果を形にできたことと、研究室で生まれたイノベーションを社会に还元し产业界と协働できることは、产学双方で従事した経験によるものだと考えています。
「社会への贡献と命を救うことを究极の目标に、见えないものを解き明かし、未来の医疗机器のための材料の设计指针を明らかにするために、これからも日々研究と教育に取り组んでいきます。」