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平成19年度 学士学位记授与式(2008年3月25日)

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平成19年度 九州大学学部学位记授与式告辞(2008年3月25日)

 本日ここに九州大学学士学位記授与式を挙行するに当たり、めでたくこの日を迎えられた2,590名の学部卒业生の皆さんに、心からお祝い申し上げます。本日まで卒业生を見守り、励ましてこられたご列席のご家族?関係者の皆様におかれましても感慨ひとしおのことと拝察致します。

 また、本日は皆さんの大先辈である、罢翱罢翱株式会社代表取缔役会长で九州大学后援会会长でもいらっしゃる重渕雅敏(しげふちまさとし)様をご来宾としてお迎えし、祝辞を顶戴できますことに、九州大学を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。

 皆さんは、九州大学で、教育?研究の指导を受け、社会との係わり、あるいは国际的な交流を通じて、何かを成し遂げたという満足感に浸るとともに、学部卒业という大きな节目に到达した自分自身を夸りに思っておられることと思います。本日の学部卒业は、自分自身の行动に今まで以上の责任を持つべき社会や大学院生活への辉かしい门出を意味するものでもあります。

 九州帝国大学创立は1911年1月1日ですが、1910年12月26日の福冈日々新闻に、「九州大学の开设」と题して次の様な内容の论説が掲载されています。「高尚な知识欲に乏しく、薄っぺらな社会的名誉と利益にかり立てられた学生とならないよう愿う。九州大学は専念一意、纯粋に学问のために学问に务め、その成果をもって社会を指导し、そのような大学が福冈にあるという名誉と利益を社会に感知させよ。そして、それ故に社会は大学を尊重し拥护する责任があるのだと要求する気构えを期待する。社会の神圣なる心的生活の指导者となるべきという要求に対して、大学は応えなくてはならない。」この论説は、学生も含めた大学関係者が、见识ある行动と秀でた教育?研究活动を社会より求められているという大学の原点を、今一度思い起こさせます。

 福冈日々新闻に书かれている、九州大学で学んだ成果をもって社会を指导し、贡献するとは、どのようなことでしょうか。学士学位记授与式にあたり、九州大学を巣立つ皆さんに社会への贡献とは何かを今一度考えていただきたいのです。政治と経済、科学と技术、文化と芸术等、现在では世の中の动きと影响が世界规模になっています。政治不信や経済モラルの欠如から生まれる社会不安や景気后退は、あっという间に全世界に伝播する仕组みになってきました。アメリカのサブプライムローン问题に端を発した経済不安が、各国の株暴落に连锁反応し、世界の経済発展?景気回復を一瞬の内に低下させたことは、その现われでしょう。社会不安?不信に対して力强い政策が打てない脆弱な社会构造を生みだしている一因に、现在、世界を先导する强力なリーダーが存在しないことにあると、私は信じています。

 九州大学では、国际的视野に立つリーダー育成のため、アメリカ?カリフォルニア州のシリコンバレーにある九州大学カリフォルニアオフィスから、本年度の后期授业の一つとして、「九大生よリーダーになろう」というタイトルで、远隔授业を行いました。アメリカ西部地区の経済、教育、政治?行政分野で活跃しておられる方々を讲师にお愿いして、九州大学の学生に「リーダーになるために」とか「リーダーであるために」などのテーマで、情热をもって语っていただきました。リーダーシップに関しては、平成18年度の学士学位记授与式でも「国际的视野を持つリーダーに」という题で告辞を述べました。九州大学で教育を受けられた皆さんは、充分な基础学力と问题解决の能力を身に付けられたと信じておりますが、九州大学の学生で最も欠けているものは国际性とリーダーシップではないかと危惧しています。それ故、社会に出られた后も、皆さん个人个人でこれらの问题点を克服していただくことを愿って、本年度の学部学位记授与式でももう一度、「国际社会で活跃できるリーダー」についてお话しします。

 リーダーに関しては、国际社会におけるリーダー、日本が世界に対して务めるべきリーダー、个人としてのリーダーなど、その立场立场によってリーダーシップの内容が异なっています。国际社会におけるリーダーとは、人类共通の课题解决に向けたリーダーであるべきで、そのためには国际的に通用する国力と国家の権威が必要ですし、その里付けとなる経済力、统率力と国际社会における多様性の理解と容认が不可欠です。このような国家としてのリーダーの条件の下で、日本が国际社会でリーダーであるためには、ゆるぎない経済力、物づくり技术を始めとする科学?技术力の発挥と、国际协力への责任が求められます。

 次に个人としてのリーダー像、すなわち、国际的感覚を身に付けたリーダーの人间像とはどのようなものでしょうか。まず、いかなる组织であっても、そのリーダーであるためには、人间味溢れ、人间的に魅力があり、奥行が深く、他人を理解し、受け入れることができる人间性と社会性が必要です。换言すると目的意识を常に持ち、将来を考えることのできる人であるとともに、他人のためにどれだけ自己犠牲ができる人であるかということになります。これらの人间性、社会性の上に、さらに、リーダーの资质として不可欠なことに「多様性の许容」があります。地球上には、様々な国あるいは地域で、多种多様な生活习惯、社会通念あるいは政治?経済体制、民族、文化、宗教があることを知り、私达と异なった民族観、世界観、歴史観あるいは宗教観を持つ集団が存在していることを知ることが、「多様性の许容」の基本です。自分自身の意见と异なる考え方を持つ个人あるいは集団が居ることを知って、初めて他人、他民族あるいは他国家を尊敬することができます。「国际的视野」の涵养には、あらゆる分野の多様性を受入れることがまず第一です。外国语が喋れるということと国际的感性を持つことは必ずしも一致しておりません。幸いにも、九州大学の学生になられた皆さんの身の回りには、世界中から集まって来た1300人近い数の留学生や研究者がいました。彼らと积极的に交流し、意见を交换し、多くの国际的友人を作り、地球上には、単纯に统一したり、规格化したり、枠に嵌め込んだりできない価値観、人间観、宗教観のあることを理解された皆さんは、在学中に既に国际的感性を身に付ける準备をしてこられたと信じています。

 职业や専门を取ったら何が残るかでその人の人间的価値が决まります。リーダーシップの意识を持ち国际的视野に立って社会に贡献することも、人间としての価値の表现の一つです。そのためには、个性、独创性、创造性を身につけるための日顷の训练と、国际的视野を持って问题点を把握し判断、解决できるようになることが必要です。いろいろな机会に私が言っていることですが、个性、独创性、创造性の涵养には、身の回りで起きる自然の変化、社会の変化に関心と好奇心を持ち、常に「何故」と考え、その回答として自分の考えを持ち、その考えを他人に説明、伝达する训练が必要です。自分の意见を持ち、それを発表することが、その人の个性に繋がり独创性となり、独创性の広がりと积重ねが创造性を生み出すのです。自分の意见を持ち、それを表现し、个性を确立することが、国际的に活跃できるリーダーになるためにも不可欠です。

 学部学位记授与式の意味するところは、学部卒业そのものではなく、「社会への人生の门出」すなわち社会的?国际的活动?贡献の「开始、始まり」なのです。この席で是非皆さんに、「国际的に活跃できるリーダー」とは何か、もう一度真剣に考えていただきたい。若い皆さんの一人一人の努力の积重ねと目的意识を持った思虑深い行动が、地球上に人间性豊かな社会を実现させることにつながるのです。社会へ出られても、九州大学で学び身に付けられた能力や知识、国际的感性を活かし、皆さんの后に続く后辈达への良き手本となるよう活跃して下さい。人间として他人の心身の痛みの分かる能力と感性を备えた国际的なリーダーとして活跃されることを心より愿い、告辞と致します。

「国际的に活跃できるリーダーに」
平成20年3月25日
九州大学総长
梶山千里