伊人直播app 九州大学について
九州大学は本日2,687人の新入生を迎えました。皆さん、九州大学への入学、おめでとうございます。また、新入生の皆さんをこれまであらゆる面で支えてこられたご家族の皆様にも心からお祝いを申し上げます。
皆さんの多くが将来への希望に燃えて高校生活を謳歌し、あるいは、受験勉强に専念していた、一昨年3月11日、日本は、东日本大震灾に袭われました。千年に一度という大地震と巨大な津波により、死者?行方不明者は1万9千人近くにのぼり、今なお、30万人を超える市民が避难生活を余仪なくされています。改めて衷心より哀悼の意を表し、お见舞いを申し上げます。被灾地の一日も早い復旧?復兴を祈念いたします。
この大灾害とそれに伴う事故から私たちは、科学技术や人文社会科学を研究し、教育している大学人として、「想定外を想定しておく」ことや「社会の中の、社会のための科学技术」という视点、「科学コミュニケーション」の重要性等、多くの教训を得ました。こうした教训を生かして、社会との信頼関係の再构筑のために努力することが、この时期に学问の府に籍を置く大学人に强く求められています。新入生の皆さんも、先ずこのことを心に铭记していただきたいと思います。
九州大学は、一昨年、2011年に創立百周年を迎えました。本学は、1903年、京都帝国大学のひさしを借りる形で、京都帝国大学福岡医科大学としてスタートし、総合大学としての九州帝国大学は、工科大学の設置を待って、1911年に創設されました。以来、学部等の増設、九州芸術工科大学との統合、法人化等を経て、現在では、学生約19,000人(留学生約2,000人を含む)、教職員約7,700人が在籍する総合大学に発展し、基干教育院と11の学部、21世紀プログラム、国際コース、18の大学院学府、4つの専門職大学院、16の研究院、高等研究院、5つの研究所、最先端の医療を提供する大学病院、400万冊を超える蔵書数を誇る附属図书馆等を擁する、我が国を代表する基幹総合大学として発展してきました。
昨年、2012年5月には、东日本大震灾に配虑して延期していた、百周年记念行事を挙行しました。この「九大百年」に际し、これからの百年に向けて「自律的に改革を続け、教育の质を国际的に保証するとともに、常に未来の课题に挑戦する活力に満ちた最高水準の研究教育拠点となる」ことを基本理念として掲げ、次のような九つの目指す姿とその実现のための行动计画を宣言しました。
です。
そして、「九大百年、跃进百大」、すなわち、すべての分野において世界のトップ百大学に跃进することをキーフレーズとして掲げています。また、皆さんが进む11の学部や研究所等もそれぞれの目指す姿と行动计画を表明しています。
この百年メッセージは、本学の役员や学部长などの部局长の侧から、1に示した「社会の课题に応える」ことを前面に押し出して、教育?研究?诊疗活动に当たるという决意を示したものですが、当然、これらはすべて新入生の皆さんにも関係があります。自分たちの「目指す姿」として受け止めていただきたいと思います。
皆さんは、先ず、これから全学教育を受けることになりますが、これは、一昨年創設した「基干教育院」が中心になって、全学の先生が協力して担当することになります。基幹教育は、九大百年に際して本学が提唱している新しい大学教育です。専門教育を学ぶ前に、学生が様々な選択肢に出会う学びの機会を創り、自分の判断で様々な選択を行い、幅広い知識や視野を身につけると同時に、生涯にわたって自律的に学び続けるアクティブ?ラーナーとしての「学び方を学び」、「考え方を学ぶ」ための姿勢と態度(基幹)を身につけるための教育です。具体的にいうと、例えば、答えの分からない問題や課題が与えられたとしても、「習っていません。」とは決して言わない。「今は、分かりませんが、大丈夫です。勉強の仕方は知っていますから。」と言える人間になるということです。これが目指す姿の3です。基幹教育の正式なスタートは来年ですが、今年度は、このことが十分意識された教育がなされます。
伊都キャンパスでの全学教育が终わるとそれぞれの学部で専攻教育を受けることになります。そこでは、「最高水準の研究を推进する」教授阵や大学院生が待ち构えています。全学教育、基干教育もそうですが、このこと、つまり、2が教育面でも极めて重要になります。基干大学での教育内容は、そうした自分の大学の教授阵によって推进?展开されている最高水準の研究に里打ちされたものでなければなりません。九州大学はそれができる大学です。
そうして、7と4にあるように、「グローバル社会と地域社会を牵引する」「骨太のリーダー」として大成し、存在感を示して顶きたい。そのために、直ちに始めて、継続して取り组まなければならないことがあります。それは、英语によるコミュニケーション能力を锻え、日本の文化や伝统、世界の歴史を正しく理解し、国际社会で活跃するリーダーとしての教养を身につけることです。
5の先进医疗に直接関係するのは、医学、歯学、薬学です。これからは、伝统的な医歯薬固有の教育研究に加えて、理工系の最先端研究が深く関係します。そうした分野への関心を持ち続け、知识の修得に心がけて下さい。また、理工系を目指す学生も医歯薬との係わりを意识していて欲しいと思います。さらに、生命科学、医疗技术の急速な进展に伴って、生命とは何かという基本的な问题にも直面しています。したがって、哲学や伦理学についての知识や见识も当然求められます。
九州大学は、2005年秋の工学系の第一陣を皮切りに伊都キャンパスへの移転という大事業に取り組んでいます。建築学を除く工学系、数理系、比較社会文化系、言語文化系は既に移転を完了しています。六本松キャンパスは閉鎖し、2009年度から、全ての新入生の学修と教育もこの伊都キャンパスでスタートするようになりました。2015年秋には理学系も移転して、いよいよ移転事業は終盤を迎えます。現在工事中の椎木讲堂は、今年度末に完成し、来年の卒業式には使えるようになる予定です。従って、入学式も、この福岡国際センターで行うのは、今年が最後になります。
こうしたキャンパスの整备や2009年に完了した病院の再开発、大桥や筑紫等の既存キャンパスの机能を高度に保つことなどを示したのが6です。病院キャンパスは、交通系や植树等、环境の整备にも力が注がれ、最先端の卓越した医疗と教育研究を行うに相応しい素晴らしいキャンパスになっています。また、移転を间近に控えた箱崎キャンパスについても、そこで学ぶ学生の立场に立って、安全で快适に学修ができるよう环境整备に力を注いでいます。
伊都キャンパスの完成までには、あと6、7年を要します。その間、工事が所々で行われ、多少の騒音や、不自由な思いをすることがあると思いますが、この時期に本学に在籍する学生にとっては、歴史に残る整備の状況に立ち会える貴重な機会でもあります。伊都キャンパスは、自然や遺跡等の文化財に恵まれたキャンパスです。それらを最高学府に相応しい形でしっかりと保全?保存しながら、その一方で、1、2にあるように「社会の课题に応える大学」として、「最高水準の研究」が随所で活発に展開されています。
例えば、伊都キャンパス入り口右手にある斩新な研究栋では、低炭素社会を先导する水素エネルギーや次世代燃料电池について世界トップクラスの研究が行われています。また、轮のついた新しい形の风车による再生可能エネルギーや生产コストとエネルギー効率の両面から究极ともいえる有机ELデバイス、ナノテクノロジー、滨颁罢等の研究开発、そして、それらを中心にした产官学连携事业、各种の実証実験等、最先端の科学技术の研究开発、产业化の様子を目近に见ることができます。
9の知の蓄積?継承、発信は、大学に求められる重要な責務であります。そのため、図书馆の整備に十分に特別に力を注ぎ、例えば、伊都図书馆(理系図书馆)には、最新の書架を導入し、これからできる新中央図书馆は、その規模や機能面、利用面で最も進んだものになる予定であります。
「知の発信」についても、図书馆が重要な役割を担い、ICTを駆使した新しい事業をいくつも展開しています。また、図书馆には、教材開発センターも設置されています。そこでは、講義する先生と受講する学生が一緒になって教材を作り上げるということも考えています。図书馆や学習広場、情報学習室等、学習するための空間も様々な形で用意されています。そこで、授業の予習復習や仲間との議論を深めて下さい。
研究者による知の创造?発信と同様に、「知の継承」は大学が教育面で担う重要な任务です。そのためには、まず、皆さんが、古典や科学技术等の「知の蓄积」を深く学修し、理解することが欠かせない基本であります。
このようなことも含めて、九州大学は「社会の要请に迅速に応える」ために、永続性のある革新的な大学活性化の制度を导入する等、様々な工夫をして、8にありますが、「自律的に改革し、进化し続けています」。当然、皆さんの本学での勉学やクラブ活动にも良い形で変化が现れると思います。
さて、皆さんは、伊都キャンパスでの全学教育の期间が终わると、そのまま伊都に残り、あるいは、箱崎地区や病院地区、大桥地区に移って学部専攻教育を受けることになります。この伊都での全学教育の期间に、「理工系の学生は人文社会系の科目」に、「人文社会系の学生は理工系の科目」に関心をもって、自分の専攻と违う异分野の科目を可能な限り受讲してください。
これからグローバル社会でのリーダーとしての活跃が期待されている皆さんには、人文社会系であっても医学生命科学や数理を含めた科学技术の基础や考え方が分かっていなければなりません。そうでなければ、リーダーとして的确かつ迅速な意思决定やチームの指导はできません。また、その逆もそうです。
単に自分の専门分野の知识や技术に习熟し、长けているだけでなく、そうした知识や技术の社会における位置付けやインパクト、可能性等について、正しく判断ができ、その上で指导性を発挥することが求められます。自分は理系人间、私は文系人间と、早々と割り切らないで顶きたい。双方に対する理解と感性が求められるのです。时代は激しく変わってきています。
皆さんは、学部に入学したばかりですが、卒业后のことも当然意识しておく必要があります。就职だけでなく、大学院に进学する学生が、特に、理工系では増加しています。2週间ほど前に学位记授与式(卒业式)を学部と大学院と2回に分けて行いましたが、学部卒业者2,563人に対して、大学院修了者は、博士、修士を合わせて、2,361人でした。いかに多くの学生が大学院に进学しているかが分かると思います。また、外国では、理工系だけでなく、人文社会系の分野でも要职に就いている多くの人が博士の学位を持っています。このような动きは、日本においても加速すると思います。
最后に、私は入学式に际して新入生の皆さんに必ず话しているのですが、「皆さんの能力は、今皆さんが自分で感じているより遥かに高い」。これは、私の40年に及ぶ教育、指导の経験に基づく私の确信であり、信条でもあります。授业やその予习?復习、演习、スキルを必要とする教习や训练、クラブ活动等に意欲的に、継続して取り组んで下さい。そうすると、自分の能力の高さに気付くはずです。ただし、根拠のない慢心はいけません。周りの人たちも同様に潜在的には高い能力をもっているのですから。
自分の力を信じて、最大限の努力をして、大学が用意している留学を始めとする様々な支援制度や施设等を积极的に活用し、素晴らしい学生生活を过ごされることを祈念して、告辞とします。
平成25年4月9日
九州大学総长
有 川 节 夫