伊人直播app 九州大学について
新年おめでとうございます。
昨年は、3月11日に东日本大震灾という未曾有の灾害が発生した大変な年でした。大地震と巨大な津波によって、行方不明者を含めて2万人近い犠牲者をだし、さらに原子力発电所の事故も诱発し、33万人を超える人々が未だに避难や仮设住宅、転居などで不自由な生活を余仪なくされています。この大震灾と事故から私たちは多くの教训を得て、同时に日本人の文化の力と伦理観の强さなどを学びましたが、被灾地の一刻も早い復旧と日本全体の復兴を愿わずにはいられません。本学にとって昨年は、九州帝国大学として创设されて以来100周年という记念すべき年でありました。「知の新世纪を拓く」をキーコンセプトにして、この数年にわたって个人や公司、団体の方々からの多くの浄财を顶きながら5月を中心に各种の记念行事を企画していましたが、この东日本大震灾に配虑し、その多くを今年に延期いたしました。
东日本大震灾だけでなく纪伊半岛を袭った台风12号を始め、世界各地で洪水や寒波、地震、火山爆発などの大规模な自然灾害が频発しました。また、「アラブの春」と呼ばれる一昨年暮れにチュニジアで始まった、アラブ诸国での反政府デモや暴动、政変など世界的な政情不安も続きました。さらに、ギリシャの信用不安に端を発する欧州の财政危机やアメリカの国债问题に代表される途上国を含めた世界规模の财政危机にも见舞われています。わが国でも国政や财政に大きな问题を抱えています。しかも、国内外のこうした问题のほとんどが未だ解决に向かっているとは言い难い状况にあり、まさに试练の一年でありました。
大学の教育?研究?诊疗活动を支える予算措置に関して、运営费交付金については、法人化以降毎年繰り返されてきた削减に実质的に歯止めがかかりました。科学研究费补助金については、採択率の改善がなされ、一部ではありますが基金化がはかられ、研究费の効果的かつ効率的な利用への道が开けたことは画期的であり喜ばしいことであります。また、大学病院の运営にも一定の配虑がなされたと思います。しかし、竞争的侧面をもった新しい仕掛けの导入と引き换えに、运営费交付金そのものは依然として减额され続けています。
このように国内外は极めて厳しい状况にありますが、九州大学は、法人化のメリットを生かし、各方面からの基干大学としての期待に応え、その责务を果たすために、数多くの事业や改革に取り组んできました。まず、最大の事业である伊都新キャンパスの整备については、用地の再取得が进み、残り约3%となり、平成24年度には再取得が完了する见通しが得られ、本学とって最大の课题がひとつ解决することになりました。3月には财务格付で「础础础」が更新され、また、第一期中期目标期间の评価反映分としてかなりの予算が平成24年度予算に上积みされるということになりました。统合移転という大事业を推进中の本学にとっては、有り难いニュースでありました。
4月には、数理学研究院を改組して、本学にとって第5番目の研究所「マス?フォア?インダストリ研究所」がスタートし、産業界と連携した産業数理に関する国際的な共同利用?共同研究拠点を目指した活動が始まりました。また、统合新领域学府に3番目の専攻として、ライブラリーサイエンス専攻修士課程が設置され、教育研究活動を開始し、早くも大学図书馆や公立図书馆、文書館、情報関連企業などから注目を集めています。
人文社会科学関係では、3月にオープンした新博多駅ビル「JR博多シティ」に「ビジネススクール」が入居し、「駅中キャンパス」としての新しい教育及び産学連携活動が始まりました。また、4月には、本学の卒业生の寄附金を基にした「ロバート?ファン/アントレプレナーシップセンター」が、組織的な起業家育成活動を開始しました。「キャンパスアジア」構想の一環としての「日韓海峡圏カレッジ」も開講し、本学と釜山大学校との間で学生が相互に移動する新しい教育が始まりました。10月には椎木正和氏(しいき教育文化振興基金会長)の寄附金による「ユヌス&椎木ソーシャル?ビジネス研究センター」を開設し、ソーシャル?ビジネスに関するユニークな研究?啓発?普及活動も始まりました。
医学诊疗関係では、附属病院や生体防御医学研究所の协力と理解を得て、悬案であった「别府病院」が4月に开院し、诊疗と临床研究が始まりました。また、7月には、「先端医疗イノベーションセンター」の建物が完成し、医学?薬学、医疗工学における基础研究と临床応用への悬け桥、実用化への大幅な期间短缩をめざした具体的な产学官连携活动が始まりました。
先端研究や産官学連携事業としては、10月には最先端研究開発支援プログラムによる「最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA) 」の研究棟が完成し、開所式を行い、具体的な活動を開始しました。7月には、経済産業省のイノベーション拠点立地支援事業(「技術の橋渡し拠点」整備事業)に、「次世代型燃料電池産学連携研究施設」が採択され、災害時にも強い大型分散電源として期待される次世代燃料電池の開発と早期実用化を進めることになりました。また、新たに「共同研究部门」という産学官連携による研究目的を前面に押し出した研究部門の設置を可能にし、既にいくつかの部門が設置され、研究活動を始めています。
国际関係では、11月の调査において留学生数が2,000人を突破し、グローバル30の申请时に约束した平成25年までに2,300人という目标に大きく近づきました。2月には、奥笔滨のカーボンニュートラル?エネルギー国际研究所のキックオフシンポジウムが开催され、具体的な研究活动に入り、研究所の建物の建筑も始まりました。4月には、様々な国际的な契约などに効果的、効率的に対処できるように専任の専门家を配した「国际法务室」が设置されました。贰鲍滨闯九州という日本における4番目の贰鲍センターも、西南学院大学と福冈女子大学との连携协力のもとでスタートしました。
本学独自の「主幹教授制度」は定着を見せ、主幹教授による先導的学術研究拠点(研究センター)も充実し、昨年設置承認された「アジア保全生態学センター」など10センターを含めて既に16のセンターで、それぞれ高度でユニークな研究活動が展開されています。4月には、大学における第三の職種としてのリサーチアドミニストレーター(RA)を顕在化させ、研究支援を強力に推進し、同時にそうしたRAのキャリアパスの形成も目指した「学術研究推進支援機構」がスタートしました。また、「教材開発センター」も予定通り附属図书馆に付設されました。
百周年関連事業としては、頂いた寄附金をもとにして「九州大学基金」を創設しました。この基金を百周年記念事業の趣旨に沿って活用し、学生や若手研究者などの支援を行い、教育?研究?診療などの環境整備や卒业生、同窓会との連携活動の支援も行うことにしています。この恒久的な九州大学基金の制度により、本学に寄附文化が醸成され定着することが期待されます。また、「九州大学百年史写真集」や「九州大学百年の宝物」、小冊子「九州帝国大学初代総長山川健次郎」を既に刊行しました。さらに、有り難いことに、椎木正和氏(しいき教育文化振興基金会長)より九大百年を記念して大学講堂の建設費をご寄附いただくことになりました。既に設計が始まり、本年11月に着工し、平成26年2月には竣工し、同年の学位記授与式を手始めに全学の主な式典などのイベントをこの「椎木讲堂」で開催することができ、同時に、芸術や文化の発信拠点として広く活用できるようになります。大学本部も一部ここに移ることになります。
九大百年に际し、昨年の新年に表明したように、これからの九大の飞跃の础石を筑くために、最も重要であり同时に最も困难と思われた二つの课题に取り组み、全学の理解を得てスタートすることができました。ひとつは、「大学改革活性化制度(永続性のある强靭な改革のスキーム)」です。これにより各部局あるいは部局の连携による强力な改革が継続的に可能となり、社会や学界に自らの教育?研究?诊疗活动の意义と重要性を明确にアピールすることができます。また、社会や学界の要请に迅速に応えるために优先すべき改革については、部局を超えた相互理解と互譲の精神でもって推进でき、さらに、改革提案の审査に参加することによって、现在、人文社会系、理工系、医歯薬系で何が问题で何が展开されているかを知ることもでき、総合大学ならではの効果が十分に発挥できると期待されます。
もうひとつは、教養教育に新しい視点で取り組む「基干教育院」の開設です。基幹教育とは、専門教育を学ぶ前に、学生にさまざまな可能な選択肢と出会う学びの機会を創り、一人一人が自分の判断で、自分が依拠しようとする枠組みを選択できるように、幅広い知識や視野を育成すると同時に、生涯に渡って自律的に学び続けるアクティブ?ラーナーとしての「学び方を学び」、「考え方を学ぶ」ための姿勢と態度(基幹)を育成することをいいます。相当数の教員を配置して、この基幹教育を企画し、実施し、運営を行います。それが中核となり牽引することによって、全部局がそれぞれの特性に応じて参加する、いわゆる「全学出動態勢」を実質的なものにすることができます。九州大学に入学するすべての学生が、この新しい理念に基づく教育システムのもとで、主体的かつ意欲的に学び、夢と希望と確かな目標をもって専攻教育に進むことができるようになります。九州大学は、新入生を、新入生の基幹教育を何よりも大事にします。そのために、この基干教育院を大学の中の最も重要な組織と位置づけ、可能な限りの資源を投入し、体制を整備したいと考えています。
以上、新年にあたり昨年の代表的な出来事を振り返って见ましたが、実に多くの事业に取り组み、多くの改革を断行し、成果をあげてきたことが分かります。特笔すべきことは、个々の改革だけではなく、永続的な改革の推进のために、本学のすべての部局が「大学改革活性化制度」というエンジンを手に入れたことであります。今年はこうした改革や制度、事业をしっかりと定着させることが重要な课题となります。
年末に阁议决定された平成24年度予算案は、现下の国の财政状况や东日本大震灾からの復旧?復兴という大事业を考えれば、大学や科学技术に関してはかなり配虑されたものとなってはいます。しかし、减额が続く运営费交付金を补完する形で新规に导入された「国立大学改革强化推进事业」に见られるように、一层の改革强化が、単に个々の大学内の改革だけではなく、大学の枠を超えた改革が、连携の推进や教育研究组织の大规模な再编成、个性や特色の明确化という形で强く要请されています。本学が単独で行える改革については、「大学改革活性化制度」によって、部局や部局连携で十分に対応でき、そうして提案される改革に対して国からの支援を受けることも期待できますが、大学の枠を超えた改革の推进については、文部科学省に新たに设置が予定されている「タスクフォース」からこれまでの审议会などでの议论と独立した提案がなされる可能性もあり、そうした动きも注视しながらより柔软で大胆な构想を描いておくことが求められます。
九州大学固有の事業としては、先ず、平成24年度から伊都新キャンパスへの統合移転の第三期にはいります。用地の再取得は完了する予定ですが、第三期の建物の整備事業を着実に進めなければなりません。平成26年に移転予定の理学系の建物の整備は、残念ながら东日本大震灾への対応などのため平成24年度の予算要求が見送られましたが、もうひとつの条件にもなっている箱崎の跡地利用計画の明確化とその承認が急がれます。一方、様々な手法を活用して進めている外国人研究者用の宿舎やカーボンニュートラル?エネルギー国際研究所の研究棟、基干教育院のための施設、椎木讲堂などの整備は大きく進展し、さらに、経済産業省の「技術の橋渡し拠点」整備事業による二つの施設が本学と自治体の支援も得て、伊都キャンパスとその手前にそれぞれ整備されます。伊都新キャンパスはその周辺も含めて一層充実したものとなります。
文部科学省が设定している竞争的资金によるプログラムの多くは、本来大学が自ら企画し推进し恒常化すべき计画に弾みを付け、そのスタートアップを支援しようとするものです。昨年スタートした「大学改革活性化制度」により採択された企画を中心にして、そうした国のプログラムの支援も活用しながら恒常化を図りたいと考えています。また、终了したプログラムや现在进行中の骋颁翱Eや骋30などのプログラムに対しても同様に対応すべきであると考えます。骋颁翱贰で展开した拠点を定着させ、骋30の出口にもなっている国际教养学部やそれに関连する国际教养学府及び研究院の具体的な设计を示す年になります。若手研究者の确保やテニュアトラック制の恒常化、女性研究者や外国人研究者の登用の定常化にも着手しなければなりません。
昨年スタートした「リーディング大学院」や「政策のための科学」、「大学の世界展开力强化事业」などの人材育成プログラムを始めとして、本年度予算で设定される様々なプログラムや事业にも积极的に挑戦し、グローバル社会を牵引する基干総合大学としての责务を果たしていく必要があります。また、第四期の科学技术基本计画にも様々な形で积极的に参画する必要があります。
冒头で触れた日本や国际社会が直面している大きな课题の多くは、解决が困难で、中には破绽さえ危惧されるものもあります。また、国内では、震灾や事故からの復旧?復兴は、大规模な予算措置などで一定の进展が期待されるものの、少子化や高齢化、公司の国际的な竞争力の低下、膨大な累积债务、停滞する経済、食料やエネルギー资源の高腾、雇用状况の悪化など厳しい状况が続き、それゆえに大学にも厳しい目が向けられています。しかし、こういう时だからこそ、大学人が率先して活动して変革を果たし、次代をリードする逞しい若者を育成し、高度な学术研究を展开し、课题解决の基盘构筑を目指して最大限の英知と努力を倾けるべきだと考えます。
九大百年、跃进百大。今年が、九州大学に学び働くすべての学生?教职员にとって、これからの九大百年の最初の年として、あらゆる分野において世界的に高く评価され、存在感のある大学として跃进を始める记念すべき年になることを愿って新年の挨拶とします。
平成24年1月1日
九州大学総长 有川 节夫