伊人直播app 九州大学について
本日、ここに大学院学位記授与式を挙行するに当たり、学位記を授与されました修士1680名、博士 388名、そして専門職大学院学位記を受けられた192名の皆さんに、これまでのたゆまぬ研鑽努力に対し深い敬意を表し、心からお慶び申し上げます。また、皆さんのこれまでの勉学や研究活動を支えて下さったご親族はじめ様々な関係者の皆様に深く感謝いたします。
本日は、アメリカ合衆国からSynnex Corporation 代表取締役会長 ロバート?ファン様に、ご多用中にもかかわらず、ご臨席賜り、ご祝辞を頂けることになっています。ロバート?ファン様には、この数年に亘り、本学学生の起業家精神と国際感覚の涵養のために多額の寄附をいただいており、これにより、2005年度から起業家精神涵養プログラム「九州大学/ロバート?ファン/アントレプレナーシッププログラム」を実施しております。ロバート?ファン様にはこのように本学の教育の充実発展のために多大な貢献をいただいており、昨日、九州大学名誉博士の称号を授与させて頂いたところです。改めまして、九州大学を代表して、厚く御礼を申し上げます。
九州大学は、明治36年(1903年)、叁つ目の帝国大学を目指して、京都帝国大学の一分科として设置された福冈医科大学と、明治44年(1911年)に开设された工科大学とをもって、同年(1911年)に日本における第四番目の帝国大学、九州帝国大学としてスタートしました。以来、百年を超える歴史を通じて、我が国を代表する基干的総合大学として、最高水準の教育?研究?诊疗活动を行って参りました。大正10年(1921年)9月1日付けで第一号の医学博士号を授与して以来、皆さんを含めて、约2万5千名の博士を、そして、约4万3千名の修士と约800名の専门职大学院修了者を、世に送り出してきました。
博士号取得者の皆さんは、九州大学大学院において、また、论文博士の被授与者にあっては、それぞれの研究机関等において、优れた研究业绩をあげられ、研究者として自立して研究活动を行うのに必要な高い研究能力を有すると认定されたわけであります。
また、修士课程と専门职大学院の修了者の皆さんは、高度な学问を修得し、研究者あるいは高度な技术者、専门职として必要な训练をされ、着実な成果を上げてこられました。
今后は、博士课程に进学される皆さんは引き続きいずれかの大学院において、就职される方は、それぞれの职场において、さらに研钻を続け、指导的な立场で、第一线の研究者?技术者として、あるいは高度な総合职等として、活跃されるわけです。社会からの皆さんへの期待は非常に大きいものがあります。それは、単にこれまでに培ってきたそれぞれの専门分野を通してのことにとどまりません。日本及びそれぞれの母国、あるいは国际社会の様々な领域?场面において、深い専门性に里打ちされた高度な指导性が期待されることが多いと思います。
例えば、我が国では、2007年にアメリカで始まりいまだ终焉しない金融危机や、税収の减少とデフレ倾向という深刻な财政状况の中で、昨年の国政选挙によって新政権に交代し、政治は歴史的転机を迎えていますが、依然として様々な大きな课题が提示されています。世界规模での环境问题もあります。こうした课题の解决にも皆さんが长年の努力によって培ってきた英知と経験が期待されています。
皆さんは、特に博士の学位の取得者の皆さんは、长年にわたる人并み外れた、想像を絶するような努力の成果として、高度で深い専门的な発见をされ、立派な论文に仕上げてきたわけであります。それにも拘わらず、诚に残念なことですが、日本においては、ややもすると、视野が狭く、専攻した分野に対する拘りが强すぎて、协调性が少ない、などと问题にされることがあります。一方、国际社会においては、研究职はもちろんのこと技术者や外交官、官僚、政治家、公司の専门职、総合职等、実に多様な职域で、博士の学位取得者が、社会的にも高く评価され、社会の中枢で活跃しています。名刺交换に际してドクターの称号をよく目にすることからも頷けます。私は、ここに、皆さん方の今后の気持ちの持ち方、物の考え方、ひいては、日本の社会の学位に対する非常に大事な方向性が示されているように思います。
様々な社会问题や国际问题に対して、たとえ専门外の问题であったとしても傍観するのではなく、これまでに培ってきた知识を活用し、あるいはそこへ至る経験を活用?援用して、自分なりの理解と解决策を常に持っていることが大事だと思います。専门分野を深く掘り下げて极めた分だけ、高みに登り周囲を鸟瞰?俯瞰し、事态を総合的?统合的に见极めて、解决を求められている课题に対して、解决の方向を提言し、社会を先导することが求められているのです。
そのための有用な方法として、アメリカの哲学者チャールズ?パースの叁つの推论と类推を绍介しておきます。解决すべき未知の问题に直面した时、我々は、まず、それまでの体系から典型的な叁段论法(モーダスポーネンス)で解决できないかと考えます。これは、これまで、多くの数学的问题で惯れ亲しんだ推论の方法で、「演绎推论(ディダクション)」といいます。いうならば、皆さんがこれまでに培ってきた専门的な知识が、直接役に立つ场面です。しかし、そうはいかない问题も沢山あります。そのときは、いくつかのデータや観测された事実からそれらを一般化するなどして知识そのものを推论する「帰纳(インダクション)」や、惊くべき事実に遭遇した时に有効な、前提?仮説を推论する「仮説推论(アブダクション)」と呼ばれる推论が有用でしょう。また、类推(アナロジー)も有用です。これは、一つのよく展开された専门的な分野の知识と対比させ、借用することによって、今直面している问题の解决のヒントを得ようとするもので、皆さんも日常生活においては无意识のうちによく使っている推论です。
こうした问题解决法と结びつけることによって、皆さんがこれまでに成し遂げてきた个々の分野における深い研究成果を、また、そこに至るまで重ねてきた経験を、広く社会一般に役立てることが可能になると思います。そして、その経験こそが、多様な职域において役立ち、期待されているのだということを肝に铭じておいていただきたい。
もちろん、それぞれの専门分野の探究を、さらに深め、未知の问题を解决し、未踏の领域を极め、専门分野を通じて、直接的に学界や公司、社会に贡献することも当然期待されています。最近、これまでの科学技术は学士や修士の皆さんが牵引してきたが、これからの高度な知识基盘社会における科学技术は、博士の学位取得者でないと难しい、とも言われています。现在は、厳しい状况にありますが、これから、こういった意味でも、また人文社会の分野においても、多様な场面で博士の需要は高まるものと考えられます。修士あるいは専门职大学院を修了して社会に出て、実务面での経験を积み、再び博士课程に进学するという道も开かれています。
皆さんの今后のご活跃を期待して、私の挨拶といたします。
平成22年3月25日
九州大学総长
有川节夫