Research Results 研究成果
ポイント
概要
意図的?人為的な頭蓋変形は、歴史を通じて様々な文化圏で一般的に行われてきました。しかし、日本国内では頭蓋変形の可能性が指摘されるのみで詳細な検討はなされておらず、意図的?人為的な頭蓋変形の習慣が日本の古代社会に存在したか否かについては未解明でした。九州大学大学院比較社会研究院の瀬口典子准教授、およびJames Frances Loftus III博士、九州大学総合研究博物馆の米元史織助教、米国モンタナ大学人類学部のMary-Margaret Murphyらの国際研究チームにより、古代日本における意図的頭蓋骨変形(ICM)の実践が明らかになりました。
研究チームは、鹿児岛県种子岛にある広田遗跡から出土した头盖の形态に焦点を当て、2顿アウトラインベースの几何学的形态分析と3顿表面スキャンイメージングを组み合わせる新しいアプローチを採用し、これが意図的な変形なのかどうかを统计分析しました。结果として、広田遗跡出土の古人骨は他の头盖骨とは异なる、短く扁平な形态であり、矢状缝合とラムダ缝合に沿った洼みの存在により意図的な头盖骨変形の可能性が强く示唆されました。また、性别による违いは见られず、男女の両方で意図的な头盖骨変形が行われていたことも分かりました。动机はまだ不明ですが、研究チームでは、広田の人々が集団のアイデンティティを保持するために头盖を変形させ、岛外あるいはソトの集団との交渉を容易にした可能性があるという仮説を立てています。日本の古代社会において意図的な头盖変形を确认したのは本研究が初であり、今后の研究によりこの习惯の社会的?文化的意义について新たな知见をもたらす可能性が示唆されています。
本研究成果はPLOS ONEに2023年8月17日(木)(日本時間)に掲載されました。
図1 広田遺跡出土古人骨(貝製品のアクセサリーをまとって埋葬されている。)
図2 土井ヶ浜遺跡(左)と広田遺跡(右)から出土した頭蓋骨の3D画像(広田遺跡の頭蓋骨は、土井ヶ浜遺跡の頭蓋骨に比べて後頭部の後頭骨が平らになっており、意図的に頭蓋骨を変形したことがわかる。)
図3 鹿児島県種子島の広田遺跡(各マーカーは墓が発見された场所を示し、性別とおおよその年齢層が記されている。)
瀬口教授からひとこと
古代社会におけるジェンダーに基づく惯习に光を当てると、意図的な头盖骨変形は母亲や子供の世话をする女性が幼い亲族に対して日常的に行っていた可能性も考えられます。女性による头盖骨変形の技术获得や、家族の継承や集団のアイデンティティにおける役割についても考察する必要があるでしょう。
论文情报
掲載誌:POLS ONE
タイトル:
著者名:Noriko Seguchi, James Frances Loftus III, Shiori Yonemoto, Mary-Margaret Murphy
顿翱滨:10.1371/箩辞耻谤苍补濒.辫辞苍别.0289219
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