Research Results 研究成果
ポイント
概要
山梨大学生命环境学部生命工学科の石内崇士准教授、同大医工农学総合教育部博士课程の坂本瑞季、金沢大学ナノ生命科学研究所の宫成悠介准教授、九州大学生体防御医学研究所?高等研究院の佐々木裕之特命教授?特别主干教授らの研究グループは、新たな解析技术を开発することで、これまで不明であったマウス受精卵の详细なゲノム构造を明らかにしました。今回の発见は将来的に不妊?流产の原因解明など、生殖医疗に役立つことが期待されます。
精子と卵子の受精により形成される受精卵は个体を构成するすべての细胞の源であり、全能性を持つとされます。しかし、希少な受精卵を用いた解析技术には限りがあり、全能性の理解には多くの课题が残されています。そこで本研究グループは、受精卵のように限られた细胞からでもゲノム构造を解析することのできる技术を开発することにしました。
ゲノム(顿狈础)上には、ヌクレオソーム(※1)が数珠のように存在しています(図1)。このヌクレオソームは、転写因子(※2)を含む多くのタンパク质が顿狈础に结合することを阻害するため、顿狈础上のどの位置にヌクレオソームが存在するのか(これをヌクレオソームポジショニングといいます)が、ゲノム机能の制御に重要となります。ヌクレオソームポジショニングを解明するには惭狈补蝉别-蝉别辩法という方法が一般に用いられてきましたが、この方法には数百万の细胞が必要でした。
そこで本研究グループは、100个の细胞で解析が可能な微量惭狈补蝉别-蝉别辩法(※3)を开発し、マウス受精卵のヌクレオソームポジショニングを解析しました。解析の结果、受精直后の1细胞期はヌクレオソーム同士の间隔のばらつきが大きいことを见出しました。しかし、その后発生が进むにつれてヌクレオソームは一定の间隔で并ぶようになるというヌクレオソームポジショニングの动的変化を明らかにしました(図2)。さらに研究グループは解析を进め、驰驰1と呼ばれる因子がヌクレオソームポジショニングの规则性を制御することも明らかにしました(図3)。
本研究成果は、2023年8月3日、米国の雑誌「Genes & Development」に掲載されました。
図1 真核細胞におけるゲノムDNAの階層構造(細胞の核には、ゲノムDNAがコンパクトに収納されています。このコンパクトな収納を可能とするの がヌクレオソームであり、ヌクレオソームはヒストンタンパク質にDNAが巻きついた構造をしていま す。ヌクレオソームは数珠のように連なって存在し、その位置(ヌクレオソームポジショニング)は 遺伝子発現調節に関わります。)
用语解説
※1 ヌクレオソーム
ヒトやマウスの染色体を構成する主要なタンパク質です。ヌクレオソームはヒストン分子が8つ集まったヒストン八量体にDNA が巻きついた構造をとっています。
※2 転写因子
遺伝子の発現を調節するタンパク質です。標的DNA に結合し遺伝子の発現を上げたり下げたりします。
※3 微量MNase-seq 法
ゲノムDNA 全体におけるヌクレオソームの位置を同定することのできる次世代シーケンス技術です。細胞にMNase と呼ばれる酵素を処理すると、ヌクレオソームが存在しないDNA は分解されますが、ヒストンに巻きついたDNA は分解されません。その後、分解されなかったDNA 配列を解読することで、ヌクレオソームポジショニングを解析することができます。従来の方法では数百万個ほどの細胞が必要でしたが、本研究では、わずか100 個の細胞で行えるような技術を開発しました。
论文情报
掲載誌:Genes & Development
タイトル:
著者名:Mizuki Sakamoto, Shusaku Abe, Yuka Miki, Yusuke Miyanari, Hiroyuki Sasaki, and TakashiIshiuchi.
DOI:10.1101/gad.350376.122
研究に関するお问い合わせ先
山梨大学 大学院総合研究部 生命環境学域生命工学科 石内 崇士 准教授
九州大学生体防御医学研究所?高等研究院 佐々木 裕之 特命教授?特別主幹教授