Research Results 研究成果
JST 戦略的創造研究推進事業において、九州大学 大学院薬学研究院の唐澤 悟 准教授らは、がん組織の温度に応答して薬剤分子を集める仕組みを開発しました。
ドラッグデリバリーシステム(DDS)は体内の薬剤分布を量的、空间的、时间的に制御する薬剤运搬技术で、がん治疗の1つとして研究が进んでいます。従来は、血管に生じる「隙间」を利用して、数十~百ナノメートルサイズのナノ微粒子中に薬剤を内包させ、がん病巣へ薬剤を集积させます。しかし、この方法では薬剤が正常な组织にも分布するため、副作用を発症するなどの问题がありました。そのため、がん组织のみを狙う高精度ながん集积法を持つDDS开発が望まれていました。
がん组织は、活动が活発なため正常な组织よりも温度が高いことが知られています。唐泽准教授らは、温度が変わると分子が集合して形やサイズが変化する「温度応答性ナノ微粒子」を研究し、がん组织に分子を集めて留まる方法を新たに开発しました。このナノ微粒子は、ヒトの体温よりも少し高温の温度域で自ら集合して大きなサイズになります。がんを持つマウスへ蛍光分子を取り付けたナノ微粒子を投与したところ、がん细胞の温度に応答してナノ微粒子ががん组织に集积する様子が蛍光イメージングで観察されました。
この方法を利用することで、従来のDDSが抱えていた、がん细胞以外への副作用を解决するだけではなく、低い投与量で负担が少ない、新たながん诊断や治疗に役立つことが期待されます。
本研究は、九州大学 大学院薬学研究院の荒木 健さん、臼井 一晃 助教、量子科学技術開発機構の青木 伊知男 博士、村山 周平 博士らと共同で行ったものです。
本研究成果は、2017年3月7日(米国东部时间)に米国科学誌「Nano Letters」のオンライン速报版で公开されました。
図1 正常组织とがん组织との形态と温度の违い
がん组织中には、血管内皮细胞の周辺に数十~数百ナノメートルの隙间や、がん细胞自身の周辺にも隙间が生じる。また、がん细胞は活発に活动するため正常组织よりも温度が高く、乳腺がんが2℃程度高温であると报告された例がある。本研究で开発した温度応答性ナノ微粒子(緑色の球)はがん组织の隙间に入り込みサイズアップし(茶色の球)、がん中に留まるように设计を行った。
図2 微粒子が温度に反応してサイズアップする様子
微粒子を含む「透明」溶液を加温すると微粒子のサイズが大きくなり、「浊り」溶液に変化する。微粒子の透过型电子顕微镜写真と微粒子が温度に反応してサイズアップする様子を透过度変化の温度依存性で示した。浊り始める温度が异なる3种类の微粒子を作り分けた。
図3 担癌マウスへの微粒子投与実験
蛍光分子を取り付けた微粒子1は、35℃以上でサイズアップする。担癌マウスへ、この微粒子1を投与し、蛍光イメージングで组织を観察した结果、がん组织付近のみに强い蛍光が観测された。これにより、温度の高いがん组织へ特异的に微粒子が集积?サイズアップし、正常组织には集まらないことが确认された。