Research Results 研究成果
ポイント
概要
过去の梅雨期の豪雨灾害を详しく调査すると、台风が间接的な影响(远隔降水)を与えている事例が多々见つかります。しかしながら、台风の远隔降水の力学?热力学的プロセスはよくわかっていませんでした。本研究で、九州大学大学院理学研究院の川村隆一教授、理学府修士课程2年の吉田尚起大学院生(研究当时)らの研究グループは、台风の远隔影响の全容解明のために、领域気象モデルを用いて、理想化された梅雨期の背景场の下で疑似的な台风を埋め込む台风ボーガス実験を実施しました。数値実験结果から、はるか远くの南シナ海から台风の东縁に沿って西日本へ多量の水蒸気を流入させる「水蒸気コンベアベルト」が四国?九州地方などの局地的大雨の発生に寄与していることを明らかにしました。また台风と台风が诱起する高気圧偏差との间で水平気圧倾度が强まるため、水蒸気コンベアベルトによる水蒸気の流入の强化のみならず、海面からの水蒸気供给を受けながら流入してくる大気境界层経由の别ルートも重要であることがわかりました。
これらの知见は、顕着な水蒸気コンベアベルトを伴った台风は灾害をもたらすような远隔降水の発生ポテンシャルが高く、特に注意唤起が必要な台风であることを示唆しています。台风の远隔降水の普遍的理解は、梅雨期の降水量の短期予测の精度向上に资することが期待される一方、台风の远隔降水の定量的な评価を通して、水资源としても重要な梅雨の将来予测の不确実性を低减していく事にも繋がります。
本研究成果は,2023年5月30日(火)に国際学術誌「Weather and Climate Extremes」にオンライン掲載(早期公開)されました。また本研究はJSPS科研費補助金(JP19H05696, JP20H00289)の助成を受けました。
【参考図】 台風によって低緯度から西日本の太平洋沿岸地域に流入してくる暖湿気塊を流跡線で示している(カラーは空気塊の高度)。 フィリピン海周辺からのルートと太平洋高気圧西縁に沿う二つのルートに大別される。
用语解説
注1) 台風ボーガス
一般的には、典型的な台风の3次元构造をモデル化した疑似的なデータを作成して数値モデルの初期场に埋め込む手法を指す。低解像度の客観解析値を初期値にした场合、现実の台风の発生?発达を予测することが难しいため、その问题を解决するために用いられる。
注2) 双方向ネスティング
亲モデル(広域モデル)から子モデル(狭域モデル)に一方的に情报を伝达させることはせずに、両モデル间で互いに情报を伝达させる(物理量のやり取りを行う)手法を指す。侧面境界の不连続性を解消するなどの効果がある。
注3) 水蒸気コンベアベルト(Moisture Conveyor Belt: MCB)
本研究の定義では、インド洋?南シナ海上のアジアモンスーン下層西風とフィリピン海付近の台風との相互作用で形成される大規模な水蒸気輸送のベルトをいう。台風はMCBを介して遠方の海域から多量の水蒸気を集積することができる(Fujiwara et al. 2017ほか)。MCBは温帯低気圧の気流構造に起因する水蒸気の強い流れ、所謂「大気の川(Atmospheric River)」とは明瞭に区別される。
下図は水蒸気の流れをベクトルで、流れの强さを阴影で表している。モンスーン西风と台风が接続して惭颁叠が形成されていく様子(顿补测2から顿补测5)がみてとれる。
论文情报
掲載誌:Weather and Climate Extremes
タイトル:
著者名:Naoki Yoshida, Ryuichi Kawamura, Tetsuya Kawano, Takashi Mochizuki, and Satoshi Iizuka
顿翱滨:10.1016/箩.飞补肠别.2023.100578
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