Research Results 研究成果
ポイント
概要
大気汚染は、高血圧、食生活のリスク、喫烟に次いで、世界で4番目に大きな健康への胁威であり、世界中で年间约650万人の早期死亡(※1)をもたらしているとされます。
九州大学大学院経済学研究院の中石知晃讲师と加河茂美主干教授、近畿大学経済学部の永岛史弥准教授、国立环境研究所の南斋规介室长と茶谷聡主干研究员らの研究グループは、経済学、数理科学、大気化学、疫学等の様々な分野における理论モデルを学际的に统合し、大気汚染による年间の早期死亡者数を推计し、その早期死亡者数の缓和ポテンシャル(可能性)を予测するための新たなアプローチの开発に成功しました。
具体的に、同研究グループは、(2010年时点で)汚染による深刻な健康被害の温床の一つとされていた中国の石炭火力発电所を対象としたケーススタディを行いました。开発された学际的アプローチを、(データが得られた)316基の発电所(中国内の総発电容量の40%程度)に适用したところ、当时これらの発电所から排出された大気汚染物质の曝露によって、年间约4万1千人程度の早期死亡が発生した可能性があり、うち约40%(1万6千人程度)の死亡は、脱硫装置を取り付けるといった発电所の环境効率性(※2)改善の努力によって回避可能であったと推定されます。
これらの健康被害は中国本土にとどまらず、大気输送の影响で、近隣の诸外国にも及んでいました。同研究グループの试算によると、研究対象の発电所から排出された大気汚染物质の影响により、日本では(当时)约900人程度の早期死亡が発生した可能性があり、そのうち约40%(360人程度)の死亡は、(适切な环境効率の改善アプローチが导入されていれば)回避可能であったと推定されます。
本研究成果は、2023年4月9日(英国時間)にEnergy Economics誌(2021 Impact Factor: 9.252)に掲載されました。
中国石炭火力発电所(316基)由来の大気汚染物质による早期死亡者数の缓和ポテンシャル(人)※45?のグリッド别
用语解説
(※1) 早期死亡
早期死亡とは、平均死亡年齢よりも前に発生する死亡のことである。本研究での早期死亡者数は、年齢?性別ごとの地域人口分布、大気汚染への推定年間曝露量、5 つの疾病に対する相対リスク(虚血性心疾患?慢性閉塞性肺疾患?脳卒中?肺がん?下部呼吸器感染症)等を基に推計されている。
(※2) 環境効率性
环境効率性は、経済学の生产理论における生产効率性(投入当たりの产出比率)の概念に、颁翱?や大気汚染物质といった环境アウトプットの概念を适用して定义されるものである。本研究では、エネルギー(石炭)消费当たりの大気汚染排出量が少ない発电所を“环境効率的”な発电所とし、逆に排出量が多い発电所を“环境非効率的”な発电所としている。石炭火力発电所の环境効率性は、エネルギー効率の高い発电机器の导入、热効率の高いクリーンな石炭の使用、高机能な脱硫装置の设置等によって具体的に向上させることができる。
研究グループからひとこと
早期死亡を防止する上で、环境効率性を向上させることは非常に重要である。今后は、本アプローチ
をインドやアフリカといった他の途上国でも応用していきたい。
论文情报
掲載誌:Energy Economics
タイトル:
著者名:Tomoaki Nakaishi、 Fumiya Nagashima、 Shigemi Kagawa、 Keisuke Nansai、 Satoru Chatani
顿翱滨:10.1016/箩.别苍别肠辞.2023.106672