Research Results 研究成果
ポイント
概要
9个の四面体から构成されたメビウス?カライドサイクル
カライドサイクル(※4)という折り纸は、6つの合同な四面体が数珠繋ぎに轮をなして连なったもので、イルカのバブルリングのようにクルクルと无限に回すことができます。四面体の个数を増やすこともできますが、个数が増えるにつれて、たわみやすく动きが不安定になり、うまく回すことが难しくなります。ところが不思议なことに、7つ以上の场合でも特别に计算された四面体を使うと、たわむことなく綺丽に回ることが発见されました。この新しいカライドサイクルは、里表のない帯であるメビウスの帯(※5)と同じ繋がりのかたちを持つため、「メビウス?カライドサイクル」と名付けました。
ただの子供のおもちゃの话にも闻こえるカライドサイクルですが、その応用のポテンシャルも学术的な意义も侮れません。カライドサイクルは、パンタグラフやワイパー、折り畳み机构などと同じく、リンク机构と呼ばれるものの一种ですが、リンク机构の动きを解析したり设计したりすることは、数学と工学の分野で长らく研究されている难しい问题の一つです。特に、劣决定と呼ばれる性质を持つリンク机构の解析は难しく、これまで劣决定でぴったり1次元自由度の动きを持つ本质的な机构は知られていませんでした。
九州大学マス?フォア?インダストリ研究所の锻冶静雄教授は、共同研究者らとカライドサイクルの构造を数学的に解析する研究を行い、环状のリンク机构を离散的な曲线として定式化することにより、メビウス?カライドサイクルの构成に成功しました。メビウス?カライドサイクルは1次元自由度を持つ初の劣决定リンク机构であることに加えて、回転时に弾性エネルギーが一定である(※6)こと、角运动量を与えることなく向きを変えられる(※7)などの特别な性质を持ちます。この発见を2018年2月に特许出愿し、2023年4月12日に特许を取得しました。
12个のねじれたパネル
メビウス?カライドサイクルの持つ特别な性质は、折り纸だけでなく、一定の角度で捩れながらヒンジ(蝶番)によって连なった机构が等しく持つ几何的性质なので、材质にもヒンジ间をつなぐ刚体の形状にも依存しません。目に见える大きさであれば、スクリューや搅拌机、ミクロの世界では高分子、大きなものでは宇宙アンテナなど、さまざまなスケールでの応用の可能性を持っています。
また、メビウス?カライドサイクルは応用上の有用性だけでなく、数学的対象としても重要であることが分かってきました。その动きは、物理に起源を持つ可积分系と呼ばれる特别な微分方程式で记述されます。一方で顶点の座标は连立二次方程式で表される実代数多様体という図形になっています。帯としてのねじれの数や自分自身との络まり方は结び目理论を用いて记述されます。このようにメビウス?カライドサイクルは、现代数学のいくつもの分野を繋ぐ交差点の役割を果たすと同时に、それら抽象的な数学概念が、手で触れることのできる形で具现化した稀有な存在でもあります。日本の游びである折り纸を通して、美しい数学を万华镜(カライドスコープ)のように见せてくるカライドサイクル、その研究から新たな数学が生まれることが期待されます。
、折り纸の设计図や3顿プリントできるデータが公开されています。ぜひ実物を手に取って、その背后にある数学を感じながら回してみてください。
用语解説
(※1)リンク机构
いくつかの刚体が関节を稼働部として连なった装置?からくり。ロボットアームや掘削机などの重机から、车のサスペンションなど身の回りの至る所で活跃している。ジェームズ?ワットの机构は、蒸気によるピストン运动を车轮の回転运动に変换するのに使われ、効率よく机関车を走らせることを可能とした。
(※2)劣决定
全関节の持つ自由度の和と、刚体による动きの制约から见积もられる自由度よりも実际の自由度が小さいリンク机构。
(※3)自由度
机构が何通りの动きができるかを表す数。1自由度のものは、决まった通りの动きを进めるか戻るかしかしないため、たわんだりがたついたりせず、制御性やエネルギー効率に优れる。
(※4)カライドサイクル
「M.C. エッシャー カライドサイクル」という本で広まった動く折り紙。その本では、回すことで次々と現れる四面体の面にエッシャー作品がプリントされている。
(※5)メビウスの帯?メビウスの轮
长方形の细长い纸の両端を奇数回捻って贴り合わせて得られる帯。轮にそって一周すると里侧に到达するため、表里の区别がつかない。リサイクルマークやエッシャーの版画のモチーフとしても用いられている。
(※6)ヒンジを巻バネで実现すると、曲げ角に応じて力がかかる。このバネが戻ろうとするエネルギーは、くるくる回転の间、个々のヒンジでは上下するが、全体では一定になり、これは理想的な状况では力を加えずに回せることを意味する。
(※7)角运动量を持たない刚体は向きを変えることができないため、猫が空中で向きを変えて着地ができるのは何故かという问题は长きにわたって物理学者の兴味を集めた。今日ではこのような动きは猫ひねり动作と呼ばれる。
论文情报
Shizuo Kaji, Kenji Kajiwara, Hyeongki Park, “Linkage Mechanisms Governed by Integrable Deformations of Discrete Space Curves”, Nonlinear Systems and Their Remarkable Mathematical Structures, Volume 2, pp 356--381, CRC Press, 2019
特许情报
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