Research Results 研究成果
ポイント
概要
微生物は細胞間でコミュニケーションをすることでその生息環境を構築?維持しています。しかし細胞間のコミュニケーションには未解明な点が多く、例えばそこでは多様な代謝物が介在すると想定されていますが、これまでに理解されているのはそのごく一部です。東京大学大学院農学生命科学研究科のPo-Chang Chiu研究生、西村慎一講師、吉田稔教授らのグループは、理化学研究所および九州大学のグループと共同研究を行い、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeが示す適応生育現象(注1)は「フェリクローム」と呼ばれる鉄にキレートする分子(シデロフォア_注2)により誘導されることを明らかにしました。この適応生育にはアミノ酸輸送体Cat1(注3)が必要であり、二次代謝物であるフェリクロームがアミノ酸代謝を制御する可能性が示唆されました。フェリクロームは1952年に単離されて以来、鉄に強力に結合するという分子機能は明らかですが、生理機能はほとんど不明のままです。本研究はフェリクロームが窒素代謝を制御し細胞間コミュニケーションで機能するという新しい生物活性を明らかにしており、本代謝物の知られざる生理機能を解明するきっかけになると考えています。
适応生育现象の観察(左)とモデル図(右)
用语解説
注1)适応生育现象:生物はそれぞれの生息环境に适応して生存しており、本研究ではストレスの高い环境に适応して示す生育を指す。特に、変异株が野生株と共存することにより环境に适応する现象を研究対象としている。
注2)シデロフォア:微生物や植物が产生?分泌する鉄にキレートする低分子化合物。アミノ酸や有机酸などの一次代谢物をくみあわせて合成される二次代谢物の一种である。细胞外からの鉄の取り込みや细胞内の鉄の贮蔵や隔离に机能することが知られているが、细胞内での代谢?分解や生理机能について详细は未解明である。
注3)アミノ酸输送体:アミノ酸を输送する膜タンパク质。细胞の外から内へ取り込む输送体や、细胞内小器官の内外に输送するものがある。
注4)窒素カタボライト抑制:利用しやすい窒素源(アンモニウムやグルタミン酸など)を优先的に取り込み代谢し、利用しにくい窒素源(分岐锁アミノ酸など)の取り込みや代谢を抑制する现象?机构を指す。利用しやすい窒素源が存在する环境に速やかに适応する机构である。
论文情报
雑誌名:「Scientific Reports」(オンライン版:10月27日)
论文タイトル:
著者:Po-Chang Chiu, Yuri Nakamura, Shinichi Nishimura*, Toshitsugu Tabuchi, Yoko Yashiroda, Go Hirai, Akihisa Matsuyama, and Minoru Yoshida*(*責任著者)
DOI:10.1038/s41598-022-22108-0
研究に関するお问い合わせ先