Research Results 研究成果
概要
我々ヒトを含む真核生物は、纺锤体(1)と呼ばれるミクロンサイズの力発生装置を细胞内に构筑して、遗伝情报の実体である顿狈础を母细胞から娘细胞へ受け渡します。遗伝情报の正确な受け渡しには纺锤体をラグビーボール状の整ったかたちに作り上げることが大切です。一方で、纺锤体のかたちが崩れると染色体の断片化や异数化の引き金となって娘细胞に异常を引き起こします。
本研究では、この纺锤体のかたち作りの成功と失败を分けるしくみを明らかにしました。特に、整ったかたちの纺锤体を作るための正しい组み立て顺序を明らかにすることに加えて、かたちの崩れた纺锤体は、その组み立て顺序を无作為に间违ったせいでなく、ある决まったルールで失败していることも明らかにしました。また、この成功と失败を分ける键が、纺锤体が自らの形状を记忆するメモリーフォームのような性质にあることも分かりました。
纺锤体のかたちの崩れはガンや不妊症との密接な関连が示唆されています。本研究で得られた知见はそれら疾病の発症メカニズムの理解を进める重要な一歩になります。
本研究成果は、国内2拠点(国立遗伝学研究所、九州大学)の生物物理学研究チームと国外2拠点(香港大学、台湾中央研究院)の生化学研究チームの国际共同研究によって得られたものです。
本研究成果は、米国科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」に2022年10月26日(日本時間)に掲載されました。
纺锤体の细胞内构筑(ナノメートルサイズの分子モーターが微小管を运んで自らの1,000倍以上も大きな纺锤体を细胞内で正しく组み立てる。そこには鋳型も设计図も存在しない。组み上がった纺锤体は复製された染色体のペアを左右に分离することで遗伝情报(染色体)のコピーを母细胞から2つの娘细胞へ等しく分配する。写真は出来上がった二极性の纺锤体(左)と多极性の纺锤体(右)。多极性の纺锤体は染色体の均等分配能を欠く。赤は微小管、緑は顿狈础蛍光染色。スケールバーは10μ尘。)
二极性の纺锤体と多极性の纺锤体は异なる経路を通って形作られることが分かった。上図はその概念を谷の间を転がるボールで表现したもの。纺锤体は2つの特徴的なかたち作りの経路を持ち、どちらかの経路に进むと、その后は别の経路に移れない。このような性质は双安定性と呼ばれる。
用语解説
(1) 紡錘体
真核生物の染色体分配装置。ラグビーボールに似た二极性の形状を持つ。
(2) 分子モーター
化学エネルギーを力に変换して细胞内で荷物の运搬や构造の组み立て作业を行うタンパク质。
(3) 機械学習
コンピュータの反復的な学习を利用して复雑なデータを分析する手法。コンピュータがデータの背景にある规则性やパターンを见つけ出し、その规则性をもとに新たなデータを解析することで将来予测や判断を可能にするアルゴリズム。
(4) 可塑性
加圧などによって起こした変形が固定化されてもとに戻らなくなる性质。人工物の代表例はプラスチックや低反発枕。
论文情报
掲載誌:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)
论文タイトル:
(纺锤体の自己组织化を支える形态成长ダイナミクス、机械的安定性、微小管のアクティブメカニクス)
著者: T. Fukuyama, L. Yan, M. Tanaka, M. Yamaoka, K. Saito, SC. Ti, CC. Liao, KC. Hsia, YT. Maeda, Y. Shimamoto
(福山達也、厳路燦、田中真仁、山岡恵美、斎藤慧、SC. Ti、CC. Liao、KC. Hsia、前多裕介、島本勇太)
DOI:10.1073/pnas.2209053119
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