Research Results 研究成果
細胞の外の環境がどのように構築されるのかについて、細胞外基質が足場を作っているということ以外多くは知られていませんでした。九州大学大学院医学研究院の佐藤有紀講師(戦略的創造研究推進事業さきがけ研究員(兼任))は、共焦点レーザー顕微鏡を用いた高精細イメージング解析から、細胞外基質のひとつであるフィブロネクチンが、血管の近傍の組織間隙に長く太い「柱」のような構造を形成することを発見しました。これまでの知見では、細胞外基質は細胞のごく近傍数?mの範囲内に蓄積するものと思われていましたが、フィブロネクチン柱は細胞から50?mも離れた场所にまで達することがわかり、この構造を作り出すメカニズムの解明に成功しました。
フィブロネクチンは力学的要因によって重合を促进されることが知られています。我々は血管が脉动することで生まれる伸缩ストレスがフィブロネクチンの「柱」を形成させる力学因子であると予想し、血管形成阻害、心拍停止、局所的血栓诱导など様々な角度から実験を行い、血管の脉动がフィブロネクチン柱の形成维持に必须であることを明らかにしました。さらに本研究から、フィブロネクチンが近傍の细胞の糸状仮足とインテグリン受容体を介して相互作用し、细胞移动や分化に関わることがわかりました。本成果は、血管周囲のメカニカルストレス受容机构の解明に発展することが期待されます。
本研究は、2017年1月17日 (火)正午(英国時間)に英国科学誌「Development」のオンライン版で掲載されました。
细胞の外侧に形成されたフィブロネクチンの柱(緑色)。この构造は、细胞の糸状仮足との相互作用と血管の脉动に起因する空间伸缩ストレスによって形成され、2つの离れた组织同士をブリッジする役割を担っている。
フィブロネクチンの柱とその构造を作り出すしくみ
フィブロネクチンの「柱」は高等脊椎动物胚の太い血管の近傍に特异的に形成されます。柱构造の発见自体も初めてのことですが、血管が力学的ストレスの発生源ではないか?この仮説を思い付いた时が最もエキサイトした瞬间でした。その后、この仮説の証明のために脉动の要因となる血流をどう操作するかが実験で最も苦虑した点です。