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Research Results 研究成果

加齢による认知机能低下を改善するグリア细胞由来分子を発见

~认知症の新たな治疗薬开発への展开に期待~ 2022.08.01
研究成果Life & Health

ポイント

  • 加齢に伴い増加する認知症に対する治療薬は、神経細胞 (※1) をターゲットとして開発されてきたが、認知機能の制御に関わるメカニズムについては不明な点が多い。
  • 本研究では、グリア細胞 (※2) に由来する分子によるコンドロイチン硫酸プロテオグリカン (CSPG) の発現制御が加齢によって低下する認知機能の改善に重要であることを見出した。
  • 今后、グリア细胞をターゲットにした认知症の新规治疗薬开発への展开が期待される。

概要

 近年の日本では、加齢に伴い认知机能が徐々に低下し、认知症に至る高齢者が増加しています。これまで、认知机能の低下は、神経细胞の减少もしくは机能不全が原因であると考えられていました。このため、认知症に対する治疗薬は神経细胞をターゲットとして开発されてきましたが、认知机能の制御に関わるメカニズムについては十分に理解されていません。

 この度、九州大学大学院医学系学府の前田祥一郎大学院生、九州大学大学院医学研究院の山田純講師、神野尚三教授の研究グループは、神戸薬科大学の北川裕之教授らと共同で、海馬の神経幹細胞のニッチ (※3) に着目した研究を行い、加齢マウスではニッチの主要な構成成分であるCSPGの発現量が低下していることを見出しました。さらに、神経細胞のグルタミン酸受容体 (※4) の阻害剤として開発され、抗認知症薬として認知症の治療に用いられているメマンチンを投与したところ、海馬におけるCSPGの発現量が増加し、神経幹細胞から産生される神経細胞が増加していることが明らかになりました。このため、海馬におけるニッチ関連分子の遺伝子発現解析を行ったところ、メマンチンの投与によって、CSPGの合成酵素であるCSGalNAcT1の発現が増強し、分解酵素であるMMP9の発現が低下していることが確認されました。また、海馬のCSPGを分解した加齢マウスでは、メマンチンによる認知機能の改善や、新生神経細胞の増加が起こりませんでした。CSGalNAcT1やMMP9はグリア細胞に由来する酵素であり、ニッチとして神経幹細胞の機能維持に重要な役割を果たしています。今後は、グリア細胞由来分子による認知機能改善のメカニズムのさらなる解明と、グリア細胞をターゲットとする新たな認知症治療薬への展開が期待されます。

 本研究成果は、国際科学雑誌「British Journal of Pharmacology」のオンラインサイトに2022年7月29日(金)に掲載されました。

神経干细胞のニッチである颁厂笔骋の合成酵素や分解酵素はグリア细胞由来の分子です。今回の研究で、それらが神経细胞の产生を促进し、加齢による认知机能低下を改善する键を握っていることが分かりました。

用语解説

※1神経细胞:情报と処理その伝达に特化した细胞であり、神経系を构成する基本単位。一般的には、他の神経细胞からの入力を受ける树状突起、情报の出力を担う轴索、核を有する细胞体からなる。通常、発达后の脳において新たな神経细胞が产生されることはないが、海马など一部の脳领域では生涯に渡って神経细胞が作られており、新生神経细胞は学习や记忆に重要な役割を担っている。

※2グリア细胞:従来は、神経细胞の代谢や构造、イオン环境の保持など、主に局所における神経细胞のサポートを担う细胞であると考えられてきた。しかし近年、神経细胞による神経伝达の制御や、记忆の形成や保持に深く関わっていることが明らかになっている。

※3ニッチ:神経細胞とグリア細胞 (アストロサイト) に分化する能力を有する神経幹細胞の未分化状態と分裂能を維持している微小環境の総称。

※4グルタミン酸受容体:神経细胞间の情报伝达の场であるシナプスに多く発现しており、主に兴奋性の神経伝达に関わる受容体のこと。学习や记忆に重要な役割を果たしていると考えられている。

论文情报

タイトル:(コンドロイチン硫酸は成体神経新生を促进し、认知机能を改善するメマンチンのターゲットである)
著者:Shoichiro Maeda, Jun Yamada, Kyoko M Iinuma, Satomi Nadanaka, Hiroshi Kitagawa, Shozo Jinno
掲載誌:British Journal of Pharmacology
顿翱滨:10.1111/产辫丑.15920

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