Research Results 研究成果
ポイント
概要
従来、重力と量子力学を统一する量子重力の研究は、超弦理论を中心とする理论研究により进められてきました。未完であるこのアプローチの难しさは、理论と実験が结びつきにくい点にあります。重力と量子力学の融合に関して、重力が量子力学に従うかどうかさえわかっていません。2020年にノーベル物理学赏を受赏したペンローズは、重力が量子力学に従わない可能性を指摘しています。重力が量子力学の枠组みに従うかどうかという「重力の量子性」は、量子重力の出発点となる问いですが、全く确かめられておらず、検証が必要です。
今回の研究は、量子力学の性质として知られる「実在性の破れ」を重力が示すかどうか确かめる方法を初めて提案し、また、実験による実証の可能性も示しました。そのような検証実験は、量子技术の発展により将来実现される可能性があります。今回の研究成果は、量子技术を用いた新しい量子重力研究の创出を期待させるものです。
松村央 博士(九州大学 助教)、南部保貞 博士(名古屋大学 准教授)、山本一博 博士(九州大学 教授)の研究グループは、先行研究において重力の量子力学的非局所性を検証するために用いられた理論模型に対して、今回は、「実在性の破れ」に着目した理論解析を行いました。図1は、理論解析で用いた振動子と左右に空間的に波束が局在化した重ね合わせ状態の粒子の模型(ハイブリッド模型)です。レゲット?ガーグ不等式は、巨視的な量子系の実在性の破れを検証するために考案されました。今回の研究では、この模型を用いて重力相互作用が量子力学の枠組みに従う場合にレゲット?ガーグ不等式が破れることを発見しました。これによって、重力の実在性の破れという量子力学的性質が確かめられる可能性を明らかにしました。
今后は、実験によりどのように巨视的な量子系を実现し重力の実在性の破れをテストするか、さらに具体的な検讨が必要です。この成果は、量子情报科学技术を基盘とし、実験と结びつく量子重力への新しいアプローチとして価値があります。
本研究成果は、米国のトップジャーナル「Physical Review A」に2022年7月20日(水)に掲載されました。
(図1)振动子と重ね合わせ状态の粒子からなるハイブリッド量子系
论文情报
掲載誌:Physical Review A
タイトル:
著者名:Akira Matsumura, Yasusada Nambu, Kazuhiro Yamamoto
DOI: 10.1103/PhysRevA.106.012214
研究に関するお问い合わせ先