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Research Results 研究成果

分化初期の酸化ストレスが细胞运命を変えるメカニズムを解明

-酸化ストレスに関连する病気の新たな治疗法に期待- 2022.07.06
研究成果Life & Health

ポイント

  • 细胞は正常に分化することで生体の恒常性を维持しています。これまでに内在性の酸化ストレスが细胞运命を変えて、様々な病気を引き起こすことが示唆されていました。しかしそのためには、细胞内环境を再现するヒトモデル细胞の构筑が必须となります。
  • 酸化ストレスを分化の任意の时期に制御できるヒト颈笔厂细胞の树立に成功しました。分化初期の酸化ストレスは転写因子贵翱齿颁1を介して内胚叶分化を抑制し细胞运命を変化させます。
  • 酸化ストレス関连の病気、発がんやアルツハイマー病などのメカニズム解明と治疗法开発が期待されます。

概要

 细胞は正常な分化过程を経ることで、组织を形作り生体の恒常性を维持しています。この分化が损なわれることは、発がんをはじめとする病気と密接に関连しています。一方で、酸化ストレスはがんや神経変性疾患など、様々な病気と関係しています。细胞の分化运命における酸化ストレスの役割を明らかにすることは病気のメカニズムを明らかにするために重要です。しかし酸化ストレスは、主に细胞の生命活动に伴って増加するものであることから、内在性の酸化ストレスをコントロールして细胞内环境を再现するモデル细胞の构筑が必须となります。
 九州大学大学院医学研究院基礎放射線医学分野の岡 素雅子客員研究員(筆頭?責任著者)、大野 みずき助教らの研究グループは様々な組織への分化が可能なヒトiPS細胞(※1)を用いて、分化のどの段階でも任意の量の酸化ストレスを制御できる新しいシステムを開発しました。内胚葉系(※2)への初期分化段階で細胞内の酸化ストレスを増加させると、転写因子(※3) FOXC1の一過性の発現増加を介して内胚葉分化が抑制されることを見出しました。我々は、この細胞がマウスにおいて腫瘍形成能を持つことを報告しています。FOXC1は通常、早期中胚葉の分化段階で発現している因子です。一方で、肝細胞がんや膵がん、大腸がんなどのがんで発現が増加しており、がん細胞の増殖や転移に重要な役割をもつことが知られています。異なる胚葉マーカー発現が予定された胚葉への分化を抑制することが知られていることから、酸化ストレスが中胚葉マーカーFOXC1発現を介して内胚葉への分化運命を変えることでがん化を引き起こすことが示唆されます。
 今回の研究成果は、酸化ストレスにより引き起こされる病気のメカニズムの解明と、新たな治疗法の开発に期待されます。
 本研究成果は英国の雑誌「Cell Death Discovery」に2022年4月1日(金)に掲載されました。

Tet-on下で、SDHC(I69E)変異タンパク質が発現する。Shieldタンパク非存在下ではカタラーゼはプロテオソーム系により分解されROSは増加する。Tet-Express+Shield1タンパク の両方を投与するとミトコンドリア移行カタラーゼ発現が安定化しROSは減少する。

用语解説

(※1) ヒト iPS細胞 (induced pluripotent stem cells)
ヒト体细胞に遗伝子导入等により初期化することで作られる、様々な组织に分化する能力と増殖する能力をもつ多能性干细胞。

(※2) 内胚葉
多细胞动物の発生初期に形成される细胞层(胚叶)の最も内侧の部分。消化管や呼吸器などに分化する。

(※3) 転写因子
顿狈础に特异的に结合し近傍の遗伝子発现を制御するタンパク质。

论文情报

掲載誌:Cell Death Discovery (2022) 8:150
タイトル:
著者名:Sugako Oka*, Teruhisa Tsuzuki, Masumi Hidaka, Mizuki Ohno, Yoshimichi Nakatsu, Mutsuo Sekiguchi (*責任著者)
顿翱滨:丑迟迟辫蝉://诲辞颈.辞谤驳/10.1038/蝉41420-022-00961-2

研究に関するお问い合わせ先

医学研究院 岡 素雅子 客員研究員