Research Results 研究成果
ポイント
概要
電流中の電子のスピン角運動量 ※1を用いて磁性体の磁化を発振させるスピントルク発振器は次世代のマイクロ波?ミリ波発生器の候補技術として注目を集めています。スピントルク発振器は約100ナノメートルまで小型化でき、電流の大きさで周波数の操作が可能で、室温で使用することができるという利点を持ちます。一方で、数100 GHzの周波数まで発振させようとすると巨大な外部磁場が必要となり、発振器全体が大型化してしまう問題がありました。
九州大学大学院システム情報科学研究院の黒川雄一郎助教、岐阜大学工学部の山田啓介助教、産業総合研究所の谷口知大上級主任研究員の研究グループ ※2は、層間磁気結合 ※3による巨大な内部磁場を利用することで、無磁場で動作する周波数可変なスピントルク発振器が実現できることを計算機シミュレーションと理論的解析によって実証しました。さらに、層間磁気結合の強さを表すパラメータを網羅的に変化させたことで、約25-570 GHzというこれまで例を見ない超広域で周波数可変なスピントルク発振器の設計指針を得ることに成功しました。
30-300 GHz帯の周波数を持つ電波はミリ波と呼ばれ、Beyond 5G ※4や車載レーダーでの利用が期待されています。今回設計したスピントルク発振器はミリ波の周波数帯を完全にカバーしており、次世代のミリ波帯小型発振器の実現へ向けた大きな一歩になると考えられます。
本研究成果は英国の雑誌「Scientific Reports」に2022年7月19日(火)に掲載されました。
スピントルク発振器では电子のスピン角运动量を电流によって磁性体の磁化へ受け渡すことにより磁化の振动を诱起することが可能です。従来は大きな外部磁场を印加しなければミリ波発振は実现できませんでした。本研究では内部の有効磁场を増强することに着目し、强い层间磁気结合を利用することで、外から印加する磁场が无い环境で実现しました。
用语解説
(※1) スピン角運動量
电子がもつ量子的な回転运动量で、磁性の起源となる量
(※2) 研究グループ
本論文著者 (全員)
九州大学大学院システム情报科学研究院: 黒川雄一郎(助教)、田中辉光(准教授)、汤浅裕美(教授)
九州大学大学院システム情报学府: 堀池周(大学院生:当时)
岐阜大学工学部: 山田啓介(助教)
産業総合研究所: 谷口知大(上級主任研究員)
(※3) 層間磁気結合
2つの磁性体を非磁性体で挟み込んだ形で発现する结合であり、二つの磁性层の磁化を特定の方向へ向ける内部磁场を発生させる。层间磁気结合は主に二种类あり、一つ目の结合は二つの磁性层の磁化を平行、または反平行になるように结合する。二つ目の结合は二つの磁性层の磁化を互いに90度方向、または平行、反平行になるように结合する。&苍产蝉辫;
(※4) Beyond 5G
现在、携帯电话等の情报端末で実用化されつつある第5世代移动通信システム(5骋)の、さらに次の世代の移动通信システム。
论文情报
掲載誌:Scientific Reports
タイトル:
著者名:Yuichiro Kurokawa, Keisuke Yamada, Tomohiro Taniguchi, Shu Horiike, Terumitsu Tanaka, and Hiromi Yuasa
顿翱滨:10.1038/蝉41598-022-15014-测
研究に関するお问い合わせ先