Research Results 研究成果
【概要】
ビッグバン宇宙の始まりやブラックホール(*6)を理解するために、量子力学と一般相対性理论の统一を目指した量子重力(*7)に関する理论研究が进められ、それらの理论検証には天文観测や高エネルギー加速器実験等の大がかりな実験研究が进められています。
东北大学大学院理学研究科物理専攻の堀田昌寛助教、游佐刚教授、名古屋大学理学研究科素粒子宇宙物理学専攻の南部保贞准教授、九州大学理学研究院物理学部门の山本一博教授と杉山祐纪さんの研究グループは、量子力学が重要な役割をする初期宇宙の原理的な问题を検証できるシミュレータを、半导体で作成可能であることを理论的に示しました。ここで提案されているのは量子ホール状态とよばれるトポロジカル物质の端を一方向に流れる1次元の电子(エッジ)です。今回の成果は、膨张宇宙でも现れるとされるホーキング辐射や、宇宙の构造形成、础诲厂/颁贵罢対応(*8)などを実験的に検証する道筋を示した重要な结果です。また、トポロジカル物质に関する新しい物质物理学の窓を拓くことも同时に期待されます。
本研究成果は専門誌Physical Review D誌(オンライン版)に2022年5月13日(米国東部時間)に公開されました。
図: エッジの時空図。エッジを伝わる電子の波(赤い波)は、空間軸の右側(入力側)の平坦な時空から、左側(出力側)の平坦な時空へと進行するが、途中に曲がった時空が存在するために、波の形状が変化する。
【用语解説】
(*1) トポロジカル物質とエッジ:
物质全体が絶縁体となっている普通の絶縁体とは违い、トポロジカル物质は试料の端以外、つまり内部(バルク)は絶縁体であるにもかかわらず、试料の端や表面が金属的で电気が流れる。量子ホール状态は2次元のトポロジカル物质の代表例で、バルクは絶縁体となっているが、试料の端(エッジ)は1次元の伝导体となり、电子は一方向にしか流れず电気抵抗はゼロになる。トポロジカル物质は2016年に、量子ホール効果は1998年と1985年にノーベル物理学赏の対象となっている。
(*2) ビッグバン宇宙の始まり:
膨张宇宙を遡ると高温高密度の宇宙となる。このような热いビッグバン宇宙がどのように始まったのか谜であるが、インフレーション宇宙(*3)はそれを説明する有力な候补となっている。
(*3) インフレーション宇宙:
热いビッグバン宇宙が始まる直前に存在していたと考えられている宇宙の加速膨张の时代。时间の経过とともに指数関数的に宇宙の大きさが膨れ、正の宇宙项をもつドジッター时空で记述される。
(*4) ホーキング輻射(放射):
一般相対性理论によって存在が予言されたブラックホールに量子効果を考虑すると、ブラックホールの地平面からホーキング辐射という热辐射が现れると考えられている。インフレーション期は地平面を伴うため、インフレーション宇宙でもホーキング辐射が予言されている。膨张率が大きい宇宙ほど热い辐射になる。
(*5) 宇宙の構造形成:
インフレーション期の加速的な膨张によって、それ以前にあった物质分布の浓淡は消えてしまうが、地平面からのホーキング辐射の量子揺らぎが古典的な物质浓淡を供给する。インフレーション期の后には重力により物质密度の高い领域が成长し、现在の星や银河などの构造を生み出す种となると考えられている。
(*6) ブラックホール:
强烈な重力场の効果のため光さえも脱出することができない天体。ブラックホールに関する研究に対して2020年と2017年にノーベル物理学赏が与えられている。
(*7) 量子重力:
一般相対论で记述される重力を量子的に扱う理论。量子的な时空の重ね合わせを扱う。
(*8) AdS/CFT対応:
負の宇宙項をもつ反ドジッター(AdS)空間を記述する量子重力理論は、1次元低い次元の平坦な時空での物質場の理論(共形場理論, Conformal Field Theory, CFT)と等価であるという仮説。超弦理論の分野において長く研究されてきた。
タイトル: | |
着者名: | Masahiro Hotta, Yasusada Nambu, Yuuki Sugiyama, Kazuhiro Yamamoto, Go Yusa |
掲载誌: | Physical Review D |
顿翱滨: | 10.1103/PhysRevD.105.105009 |