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Research Results 研究成果

肠管再生やがん化に重要な新たな干细胞の発见

~がんの新规治疗开発や再生医疗への応用に期待~ 2022.03.22
研究成果Life & Health
  1. 高度な组织修復力を持つ肠管上皮は臓器の再生を研究するための有用なモデルとして注目されていたが、再生の详细なメカニズムは不明であった。
  2. 本研究では肠管上皮の再生に必要な新しい干细胞を発见し、肠管の再生やがん化の过程において「胎児返り」と「胃上皮様変化」という2つの现象が重要であることを见出した。
  3. これらの知见を基に、今后がんの新规治疗法の开発や再生医疗などへの応用が期待される。

 九州大学生体防御医学研究所の中山 敬一 主幹教授、比嘉 綱己 研究員らの研究グループは、腸管上皮の再生に必要な組織幹細胞(※1)を新たに発見しました。また、腸管の再生やがん化の過程に「胎児返り」と「胃上皮様変化」(※2)という2つの現象が重要であることを明らかにしました。
 肠管上皮は大きな组织伤害を受けた后でも高度な再生力を示すため、臓器の维持や再生机构を研究するための有用なモデルとして注目されていますが、再生を司る细胞の実体やメカニズムは不明でした。
 本研究グループは、造血干细胞や神経干细胞の细胞周期(※3)停止に重要な辫57遗伝子(※4)が、肠管上皮においても稀少な细胞集団に特异的に発现していることを発见しました。そこで辫57の系统追跡(※5)マウスを作製し、辫57発现细胞の挙动を解析しました。その结果、辫57発现细胞は通常の状态では分化细胞(※6)の一种として存在していますが、组织がダメージを受けると脱分化(※6)して干细胞となり、肠管の再生に重要な役割を果たすことがわかりました。さらに再生途中の肠管上皮を1细胞搁狈础-蝉别辩法(※7)によって解析したところ、辫57発现细胞は「胎児返り」と「胃上皮様変化」という细胞アイデンティティの大规模な再构筑を経て、干细胞の状态へと逆戻りしていることが明らかとなりました。このような変化は、临床的にはがんや炎症などの病态でしばしば认められます。これらは正常の组织に本来备わっている再生システムが、病态下で利用されたり误作动した结果なのかもしれません。事実、私たちは上记と同様の现象が肠管肿疡でも起こっていることを明らかにしました。
 本研究により、正常腸管上皮および腸管腫瘍の組織再生メカニズムの重要な一端が明らかとなりました。その知見は、今後がんの新規治療開発や再生医療などへの応用が期待されます。本研究成果は英国の雑誌「Nature Communications」に2022年3月21日 (月) (日本時間)に掲載されました。

p57発現細胞による腸管上皮の再生 腸管陰窩に存在するp57発現細胞は、組織傷害を受けると「胎児返り」と「胃上皮様変化」を介して幹細胞へと脱分化し、傷害後の腸管上皮を再生させるのに重要な役割を果たします。

用语解説

(※1) 組織幹細胞
生体内の个々の臓器や组织において、その组织のすべての细胞を生み出す源となっている细胞のことです。たとえば血液の细胞を生み出す干细胞は造血干细胞、神経を生み出す干细胞は神経干细胞と呼ばれ、臓器ごとにそれぞれ固有の组织干细胞を持っていると考えられています。

(※2) 胃上皮様変化(化生)
化生とは、ある组织の细胞が、别の组织の细胞に置き换わってしまう现象です。たとえば胃がんなどでは、胃の细胞が肠の细胞に置き换わってしまうことがあり、これを「胃の肠上皮化生」と呼びます。肠管に慢性炎症を起こすクローン病などでは、逆に「肠の胃上皮化生」が起こることが知られています。

(※3) 細胞周期
细胞は分裂しながら増殖していきますが、その过程で分裂と休止を繰り返しています。この细胞分裂と休止のサイクルを细胞周期とよびます。

(※4) p57
细胞周期を抑制することで、増殖のブレーキとして机能する遗伝子のひとつです。とくに辫57は造血干细胞などにおいて、「静止状态」とよばれる长期间の细胞周期停止に重要なことがわかっています。

(※5) 系統追跡
特定の細胞(例: p57発現細胞)に、遺伝学的な仕掛けによって子孫まで受け継がれる目印(蛍光タンパク質など)を導入することで、その細胞の運命や産生される子孫細胞を追跡する実験のことです。

(※6) 分化?脱分化
いろいろな细胞になれる干细胞の状态から、特定の种类の细胞になることを「分化」といいます。逆に特定の细胞种が干细胞へと逆戻りすることを「脱分化」といいます。

(※7) 1細胞RNA-seq法
1个の细胞において、その中に発现しているすべての遗伝子の搁狈础量を调べる手法です。これを数千~数万个の细胞に対して行うことで、ある组织の中にどんな细胞が存在しているのか、また条件の违いによって各遗伝子の発现状态が细胞ごとにどう変わるのかなどを调べることが可能です。

论文情报

タイトル:
着者名: Tsunaki Higa, Yasutaka Okita, Akinobu Matsumoto, Shogo Nakayama, Takeru Oka, Osamu Sugahara, Daisuke Koga, Shoichiro Takeishi, Hirokazu Nakatsumi, Naoki Hosen, Sylvie Robine, Makoto Taketo, Toshiro Sato & Keiichi I. Nakayama
掲载誌: Nature Communications
顿翱滨: 10.1038/蝉41467-022-29165-锄    

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