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Research Results 研究成果

次世代型医薬品に活用できるαーアミノ酸の合成方法开発に成功!

~中分子ペプチド医薬品の基盘技术としての活用に期待~ 2022.03.15
研究成果Life & HealthPhysics & Chemistry
  1. 有望な创薬モダリティ「中分子ペプチド」は、かさ高い置换基を导入することにより、革新的な医薬品となることが期待されている。しかし、立体障害のためその合成は困难であった。
  2. 今回、ペプチド合成に利用されるα-アミノ酸へかさ高い置换基を导入する新技术の开発に成功し、これまで困难であった置换基の多様なデザインが可能となった。
  3. この技术を利用して、立体构造の安定化などの新しい机能性を付与した、革新的な次世代型医薬品「非天然型中分子ペプチド」创出への活用が期待される。

 数个から十数个のアミノ酸からなる「中分子ペプチド」は、従来の低分子医薬品や高分子医薬品に次ぐ、新たな创薬モダリティとして注目されています。生体内や天然に広く存在するα-アミノ酸に加え、かさ高い(立体的に非常に大きい)非天然α-アミノ酸を人工的に导入することが出来れば、天然α-アミノ酸と异なる性质をもつ高机能性ペプチドの创出につながり、革新的な次世代型医薬品として期待されています。しかし、かさ高い非天然α-アミノ酸の合成は极めて难しく、新规合成法の开発が强く望まれていました。
 今回、九州大学大学院薬学府の辻汰朗大学院生、同大学大学院薬学研究院の矢崎亮助教、大嶋孝志教授らの研究グループは、同大学大学院薬学研究院の高橋大輔講師、医薬基盤?健康?栄養研究所 AI健康?医薬研究センターの李秀栄サブプロジェクトリーダー、水口賢司センター長らとの共同研究により、容易に入手できる汎用性の高い原料を用いたかさ高い非天然α-アミノ酸の新たな合成法を開発し、非天然α-アミノ酸を導入した安定な中分子ペプチドの創出に成功しました。
 本研究グループはこれまで、かさ高い非天然α-アミノ酸の合成で障害となる大きな立体反発を克服する手法として、反応性の高いラジカル*1种を用いた合成法を世界に先駆けて报告しています(「立体的に大きな非天然α-アミノ酸の新たな合成法を开発」(2020年5月1日)*2。しかし、原料となるラジカル种は容易に入手できず、合成可能な非天然α-アミノ酸に制限があり、汎用的なペプチド合成への展开と机能评価を妨げてきました。
 今回、本研究グループは、汎用性の高い原料を用いた非天然α-アミノ酸の合成法を新たに开発し、かさ高い非天然α-アミノ酸を导入したペプチドの创出に成功しました。さらに、円偏光二色性スペクトル法*3とインシリコ构造解析*4を用いて、非天然α-アミノ酸がペプチド构造を安定化することも明らかにしました。本研究成果は、汎用的な原料だけで、かさ高い非天然α-アミノ酸による中分子ペプチドの机能设计が可能であることを世界に先駆けて示した例であり、中分子ペプチド医薬品などの高机能ペプチド材料开発の基盘技术としての今后の活用が期待できます。
 以上の本研究成果は、2022年 3月 14 日(月)午後 4 時(ロント?ン時間)に科学雑誌「Nature Synthesis」 にて公開されました。

入手容易な原料を用いた立体的に大きな非天然α-アミノ酸合成法の概要。本手法では様々な种类の非天然α-アミノ酸を合成することが可能。合成した非天然α-アミノ酸を组み込んだペプチドは、従来のペプチドと比较してαヘリックス*6性が顕着に向上し、特异的な构造を示した。

用语解説

*1)ラジカル
全体の电荷は中性であるが、反応性の高い高エネルギー化学种。そのため様々な反応性を示す一方で、その制御が困难である。

*2)先行论文
2020年5月1日 プレスリリース
「立体的に大きな非天然α-アミノ酸の新たな合成法を开発
~非天然α-アミノ酸を持つ中分子ペプチド创薬への応用に期待~」
/ja/researches/view/442
https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jacs.0c02707

*3)円偏光二色性スペクトル法
右円偏光と左円偏光の吸収の差を利用して,ペプチドやタンパク质の2次构造を特徴づける実験手法

*4)インシリコ构造解析
計算化学やバイオインフォマティクス の手法を用いた生体高分子の構造解析。インシリコ(in silico)は、生体内(インビボ、in vivo)や試験管内(インビトロ、in vitro)対してコンピュータ内を指す。

*5)アミノ酸厂肠丑颈蹿蹿塩基
翱’顿辞苍苍别濒濒教授らによって40年以上前に开発されたα-アミノ酸を合成するための原料。これまでに多くのアルキル化反応に用いられている。

*6)αヘリックス
ペプチドやタンパク质の2次构造の一种で、らせん构造のこと。タンパク质中のらせん构造をはじめとした2次构造は、他のタンパク质などを认识、机能を発现するために重要な役割を担っている。そのため、中分子ペプチド医薬品开発では、より小さなペプチドにおいて安定ならせん构造を形成することが一般的に求められる。

 

研究者からひとこと
本研究は、自分以外にも大势の先生方が関わってできた情热の结晶です。大局を见据え一つ一つ导いてくださった先生方、先人をきって直接手取り足取り教えてくださった先辈方や、论文化に至り身を粉にして手伝ってくださった后辈方に热くお礼を申し上げます。本当にありがとうございました(辻 汰朗)

论文情报

タイトル:
着者名: Taro Tsuji, Kayoko Hashiguchi, Mana Yoshida, Tetsu Ikeda, Yunosuke Koga, Yusaku Honda, Tsukushi Tanaka, Suyong Re, Kenji Mizuguchi, Daisuke Takahashi, Ryo Yazaki, and Takashi Ohshima
掲载誌: Nature Synthesis
顿翱滨: 10.1038/蝉44160-022-00037-0  

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