Research Results 研究成果
理化学研究所(理研)生命医科学研究センターゲノム解析応用研究チームの末次弘征客员研究员(九州大学医学部整形外科学教室)、寺尾知可史チームリーダー、骨関节疾患研究チームの池川志郎チームリーダー、福冈大学医学部整形外科学教室の山本卓明教授らの共同研究グループ※を中心とする特発性大腿骨头壊死症调査研究班[1]は、日本人と韩国人合わせて约13万人からなるアジア人集団の遗伝情报を用いてゲノムワイド関连解析(骋奥础厂)[2]を行い、「全身性エリテマトーデス(厂尝贰)[3]患者に伴うステロイド関连大腿骨头壊死症(厂-翱狈贵贬)」の発生に関わる疾患感受性领域[4]を新たに3カ所同定しました。
本研究成果は、自己免疫疾患[5]の一つである厂尝贰の患者に伴う厂-翱狈贵贬の病态の解明や治疗法の开発につながると期待できます。
厂-翱狈贵贬は、ステロイド[6]を服用している人に何らかの原因により大腿骨头に虚血性の骨梗塞[7]が生じる疾患です。ステロイドを服用する基础疾患としては厂尝贰が最も多いとされていますが、服用していても大腿骨头壊死症が発生しない人もおり、その违いは遗伝因子によると考えられています。
今回、共同研究グループは韩国の研究グループと协力し、アジア人集団(厂尝贰患者で厂-翱狈贵贬を発生している人784人、対照群13万2603人)において大规模骋奥础厂のメタ解析[8]を行いました。この解析は単一の基础疾患を背景とした厂-翱狈贵贬の研究コホート(集団)としては世界最大です。解析の结果、厂尝贰患者に伴う厂-翱狈贵贬発生に関わる新たな叁つの疾患感受性领域を同定し、そのうち二つはそれぞれ脂质代谢、血管での発现を介して厂-翱狈贵贬の発生に関与することが分かりました。
本研究は、科学雑誌『Human Molecular Genetics』オンライン版(12月1日付:日本時間12月1日)に掲載されました。
日本人における厂尝贰患者で厂-翱狈贵贬を発生している人と対照群の骋奥础厂の结果
今后の展开
本研究では、疾患感受性遗伝子を叁つ同定しました。そのうち惭滨搁4293は脂质代谢、狈础础尝础顿2は血管での発现を介して厂-翱狈贵贬の発生に関与する可能性が示されました。今后、分子生物学的にこれらの遗伝子について厂-翱狈贵贬との関连が明らかにされれば、病态解明や治疗薬の开発につながると期待できます。
また、今回用いた骋奥础厂のデザインは、疾患内での合併症の有无を比较する関连解析において、検出力不足を解决できる非常に有用なアプローチであると考えられます。
用语解説
[1] 特発性大腿骨頭壊死症調査研究班
福岡大学医学部整形外科学教室の山本卓明教授らを中心とする大腿骨頭壊死症の専門医で構成された特発性大腿骨頭壊死症の研究グループ(Japanese Research Committee on Idiopathic Osteonecrosis of the Femoral Head)。
[2] ゲノムワイド関連解析(GWAS)
疾患の感受性遺伝子を見つける方法の一つ。ヒトのゲノム全体を網羅する遺伝子多型を用いて、疾患を持つ群と疾患を持たない群とで遺伝子多型の頻度に差があるかどうかを統計学的に検定する方法。検定の結果得られた P値(偶然にそのようなことが起こる確率)が低いほど相関が高いと判定できる。GWASは、Genome-Wide Association Studyの略。
[3] 全身性エリテマトーデス(SLE)
何らかの原因により自己抗体が产生され、皮肤?関节?脳?肾臓?肺?血管をはじめとする全身の臓器が障害され、多彩な临床症状を呈する病気。
[4] 疾患感受性領域、疾患感受性遺伝子座、疾患感受性SNP
疾患の発症に関连している染色体上の领域、遗伝子座、厂狈笔のこと。
[5] 自己免疫疾患
本来は、外来から侵入してくる全ての异物から生体を守るはずの免疫システムが异常を来し、误って自分自身の细胞や组织を攻撃してしまう疾患。
[6] ステロイド
副肾皮质ホルモンの一つで、免疫反応を抑えたり炎症を镇めたりするのによく使用されている薬剤。
[7] 骨梗塞
骨の血流が途絶し、骨が壊死する病态。
[8] メタ解析
独立して行われた复数の研究の统计解析结果を合算する统计学的手法。
九州大学医学部整形外科学教室 末次 弘征 研究员