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Research Results 研究成果

月面の砂でも见つけた!金属鉄のひげ状结晶

2021.03.04
研究成果Physics & ChemistryMaterials

 九州大学基干教育院の松本徹JSPS特別研究員、野口高明教授らのグループは、米アポロ11号,17号で回収された月の試料を分析し、月面の砂では全く知られていない金属鉄のひげ状結晶を発見しました。ひげ状の金属鉄は、探査機はやぶさが回収した小惑星イトカワの砂で初めて見つかった結晶であり、砂の来歴や天体表面の化学進化を知る手がかりになると期待されます。
 ひげ状金属鉄は硫化鉄(鉄贵别と硫黄厂の结晶)の表面で见られます。硫化鉄表面の硫黄は太阳から吹くイオンの流れである太阳风や陨石衝突の加热によって吹き飞ばされ、余った鉄原子を元にひげ状金属鉄が成长すると考えられます。ひげの内部には多数の鉄结晶が含まれ、その结晶の方向がお互いに関连しながら、根元から结晶が次々に生まれてひげ状金属鉄が成长した様子が电子顕微镜による観察から明らかになりました。本研究から、ひげ状金属鉄は、大気のない太阳系の天体に共通して成长しており、砂が経験した天体表面のイベントを知る新しい指针となることが分かりました。
 月の砂の硫黄は岩石よりも重い同位体に富み、硫化鉄から硫黄が失われることがその同位体异常の原因だと长い间予想されてきました。今回の発见はその予想を里付ける初めての鉱物学的な証拠となります。硫化鉄から失われた硫黄の一部は月面の重力圏を脱出せずに月面を旅するかもしれず、最终的には月面の氷の中に捕まり月面氷の化学组成に影响する可能性があります。
 本研究は2021年3月4日付で国際誌「Geochimica Cosmochimica Acta」に掲載されました。

(図)月の砂の硫化鉄とひげ状の金属鉄结晶を撮影した电子顕微镜の画像(拟似カラー)。
矢印で示した金属鉄のひげ状结晶(青)が硫化鉄(紫)の表面に成长しています。
硫化鉄は太阳风ガス(水素やヘリウム)が蓄积し、発泡したため穴だらけ(多孔质)になっています。

研究者からひとこと

アポロ试料の分析がはじまって50年以上の间、世界中の研究者が気づかなかった结晶を见つけ、月面の科学を前进させることができました。
この研究では、小惑星イトカワの粒子に対する长年にわたる研究が役立ちました。
はやぶさ2が届けた小惑星リュウグウの砂の歴史を知る上でも、ひげ状金属鉄は重要になります。

论文情报

,Geochimica Cosmochimica Acta,

研究に関するお问い合わせ先


日本学術振興会特別研究員PD 松本 徹
E-mail: matsumoto.toru.502@m.kyushu-u.ac.jp