Research Results 研究成果
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄)原子力基礎工学研究センターの中山梓介研究員と岩本修グループリーダー、国立大学法人九州大学(総長 石橋達朗)大学院総合理工学研究院の渡辺幸信教授、国立大学法人大阪大学(総長 西尾章治郎)核物理研究センターの緒方一介准教授は、重陽子1)による核反応からの中性子発生量を高精度に予測する計算手法を開発しました。また、その予測値を基に中性子源2)の設計のための核反応データベース3)JENDL/DEU-20204)を整備し、公開しました。
原子核物理実験における不安定原子核ビーム生成や医疗用放射性物质の製造、また、核融合炉内での使用が想定される材料の试験などにおいて、10惭别痴5)を超えるエネルギーをもった中性子が大量に必要とされはじめています。しかし、原子炉などを用いた従来の中性子源では、この要求を満足する中性子を供给することはできませんでした。そこで、新たな中性子源として、重阳子による核反応を利用したものが注目されています。これは、加速器で発生させた重阳子をリチウムなどに衝突させ、そこで起きる核反応から高エネルギーの中性子を得るという手法です。
利用目的に応じた様々な仕様の中性子源を设计し、性能を検讨するには、重阳子による核反応から発生する中性子の量を様々な条件(衝突させる重阳子のエネルギー、标的となる原子核の种类など)で精度良く予测できなければなりません。しかし、従来の予测手法では広范な条件での信頼性の高い予测ができませんでした。これは、重阳子が持つ量子力学的な「波」としての性质を十分に取り入れておらず、重阳子が阳子と中性子に分解する过程を适切に计算できていなかったためです。
本研究では量子力学的効果を考虑した复数の理论モデルを组み合わせることで、重阳子による核反応から生じる中性子量を予测する新たな计算手法を开発しました。実测値との比较から、开発した手法は従来の予测手法よりも中性子発生量の予测精度が4倍以上向上していることが确认されました。さらに、本手法による予测値を中性子源の设计に用いられるシミュレーションソフトウェアで利用できるデータベースの形にまとめ、闯贰狈顿尝/顿贰鲍-2020として整备し、公开しました。
闯贰狈顿尝/顿贰鲍-2020を使用することで、シミュレーションの信頼性が大きく高まります。これによって、利用目的に応じた様々な中性子源を検讨?设计?运転することが容易になり、基础科学や材料开発、医疗など幅広い分野における中性子利用の促进が期待されます。また、闯贰狈顿尝/顿贰鲍-2020は国际原子力机関(滨础贰础)が主导する国际プロジェクトでも高く评価されており、核反応データベース贵贰狈顿尝6)への採用が予定されています。
闯贰狈顿尝/顿贰鲍-2020は以下のホームページから2021年2月10日に公开しました。
本研究成果は、日本原子力学会英文論文誌「Journal of Nuclear Science and Technology」に2021年2月10日付でオンライン掲載されました。
本研究のイメージ図
阳子(オレンジ)1つと中性子(水色)1つずつで构成される重阳子と他の原子核が衝突した际の核反応に関する様々な量を计算し、その结果をデータベースに整备した。