Research Results 研究成果
九州大学大学院工学研究院の君塚信夫教授、永井邑树大学院生、森川全章助教らは、光信号に応答する分子が反転対称性を持たない极性结晶*1を自発的に形成し、かつ结晶中で光异性化*2することにより结晶が液化すること、さらにこの光诱起“固―液”相転移现象を利用して光第二高调波発生を他波长光でスイッチする光论理ゲート机能を持つ分子システムの开発に成功しました。
π共役電子系を持つ有機分子は、分子設計の自由度が高く、無機結晶材料に比べて大きな非線形分極を示しうることから、SHG(Second Harmonic Generation:光第二高調波発生)*3材料、さらに光コンピューター要素技术への応用が期待されています。有机分子が厂贬骋特性を示すためには、分子が电気双极子を持ち、反転対称性をもたない极性结晶が得られることが必要です。ところが、ほとんどの有机分子结晶は対称中心を持ち、分子が一方向に配向した极性结晶が得られる例は极めて限られます。また、巨视的な异方性を有する极性结晶薄膜の作製技术や、光を用いて厂贬骋特性をスイッチする光论理ゲート机能を持つ安定な有机厂贬骋材料は得られていませんでした。
本研究では、溶液中で極性結晶を自発的に形成する化学的に安定な光応答性分子を見いだし、気―水界面で巨大な極性結晶薄膜を形成することや、固体結晶膜において近赤外光(1064 nm)を可視SHG光(532 nm)に変換するとともに、光誘起“固―液”相転移に基づき可逆的にon-offスイッチすることに成功しました。今後は光論理ゲートなど、光コンピューターの要素技術開発に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2020年12月21日付でドイツの国際学術誌「Angewandte Chemie International Edition」にオンライン掲載されました。日本学術振興会科学研究費(JP20H05676, JP16H06513)、小笠原科学技術振興財団、積水化学「自然に学ぶものづくり」研究助成の支援により行われました。
■用语解説
*1)极性结晶
アゾベンゼンの光异性化反転中心を持たず、分子が结晶中で非対称な分子配向をとる结果、自発的な分极を有している结晶のこと。多くの有机分子结晶においては、分子が电気双极子モーメントを打ち消すように配列した“反転対称”を有する构造を与えるが、今回の化合物1のように分子が结晶中で反転対称性のない、非対称な分子配向をとった场合、极性结晶と呼ぶ。
*2)光异性化
光励起によって、分子の构造(コンホメーション)が変化すること。アゾベンゼンのトランス(迟谤补苍蝉)-シス(肠颈蝉)光异性化は有名であり、広く応用されている。アゾベンゼン(右図)は热力学的に準安定な肠颈蝉体からより安定な迟谤补苍蝉体に(室温においても)次第に戻ることが欠点であった。
*3)光第二次高調波発生(Second Harmonic Generation, SHG)
レーザー光が反転対称性を持たない物质(非线形光学结晶、极性结晶)に照射された时に、2つの光子を吸収して、元の光子の2倍のエネルギー(入射光の2倍の周波数あるいは半分の波长の光)を持つ光子を1つ放出する现象。もともとの光のコヒーレンスを维持していることが特徴であり、等方性の媒体や、反転対称性を持つ媒质の中では発生しない。入射光の电界强度の二乗に比例して分极が起こる二次の非线形光学现象の一种であり、入射したレーザーの1/2の波长の光を発生するため、光波长変换に利用される。