Research Results 研究成果
ポイント
?アジア稲とアフリカ稲の雑种から新种の稲の作出に成功。
?染色体を倍加した花粉が异种间の生殖障壁を打破できることを発见。
?多様な环境における稲の栽培化に期待。
北海道大学大学院農学研究院の貴島祐治教授と同大学院博士後期課程の國吉大地氏,北海道大学北方生物圏フィールド科学センター,酪農学園大学農食環境学群,九州大学大学院農学研究院,岡山大学資源植物科学研究所の共同研究グループは,アジア稲(Oryza sativa)とアフリカ稲(O. glaberrima)の雑種由来の花粉から,両種のゲノムを保持する新しい稲を作出しました。
二つの稲の间には种の壁(生殖障壁*1)があり,交配しても种子をつける雑种植物はこれまで得られていませんでした。この生殖障壁は雑种植物の花粉と卵が正常に発育しないことに起因します。本研究では,アジア稲とアフリカ稲の雑种植物から崩壊前の花粉を持つ雄しべ(葯)を取り出して,葯培养*2を施すことにより,花粉から19の植物体を作出することに成功しました。植物体に分化した个体のゲノムは,アジア稲とアフリカ稲それぞれから构成されており,19株のうち5株は种子を作る能力がありました。惊くことにこの5株は全て亲个体の2倍のゲノムを有する4倍体でした。
アジア稲とアフリカ稲の雑种植物では花粉を作るときの减数分裂*3の过程で染色体数が减数しない异常が起きていました。4倍体の个体は,この异常によって染色体が通常の花粉の倍の2倍性花粉が生じ,それが植物体に分化したものでした。本来,减数分裂の异常は花粉の正常な生育を阻害します。しかし,减数分裂の异常で生じた2倍性の花粉を葯培养することで,生殖障壁を回避して种子を作る4倍体の稲が生まれました。得られた4倍体の稲は遗伝子组换え技术を用いずに作出されたものです。この実験结果は,植物の进化において倍数化が新しい种の発生に重要な役割を担ってきた事実を証明したことになります。
なお,本研究成果は,日本時間2020年11月5日(木)午後2時(グリニッジ標準時2020年11月5日(木)午前5時)公開のFrontiers in Plant Science誌に掲載されました。
アフリカ稲とアジア稲のゲノムを半分ずつ持ち,なおかつ种子を実らせた稲