Research Results 研究成果
九州大学大学院薬学研究院の大戸茂弘教授、小柳悟教授らの研究グループは、副肾皮质から分泌されるホルモンの概日リズムに着目して、神経障害性疼痛(神経损伤が引き起こす慢性的な痛み)が、时刻により変动する仕组みを明らかにしました。
神経障害性疼痛は、神経のダメージで発症する慢性的な痛みで、軽い触刺激でも激痛を引き起こす「痛覚过敏」を特徴とします。神経障害性疼痛の発症には、脊髄のミクログリアという细胞で増えるプリン受容体が重要な役割を担っており、この受容体はアデノシン叁リン酸(础罢笔)で刺激されて强い痛みを引き起こします。一方で、神経障害性疼痛における痛覚过敏の程度は、时刻によって変动することが知られていましたが、その仕组みは不明でした。
多くの生物は、地球の自転に伴う外部环境の周期的な変化に対応するため、自律的にリズムを発振する机能(体内时计)を保持しています。この体内时计の働きによって、睡眠?覚醒のサイクルやホルモン分泌などに概日リズムが生じます。今回、研究グループはマウスを用いた実験によって、副肾皮质からのホルモンの分泌が上昇する时间帯に、脊髄のアストロサイトという细胞から础罢笔の放出が増えることを见出しました。放出された础罢笔はミクログリアのプリン受容体を刺激して痛みを悪化させていました。すなわち、副肾皮质ホルモンによって生じる础罢笔放出の概日リズムが、神経障害性疼痛の时刻の违いを引き起こしていることを突き止めました。これらの知见から、痛みを特定の时间帯に悪化させる分子を标的とした治疗薬の开発や神経障害性疼痛の新しい治疗法の构筑に繋がることが期待されます。
本研究成果は、2016年10月14日(金)午前10時(英国時間)に国際科学雑誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました(DOI: 10.1038/NCOMMS13102)。
副肾皮质ホルモンは、脊髄のアストロサイトに作用して厂驳办-1というタンパク质の発现を诱导します。厂驳办-1タンパク质は、アストロサイトからの础罢笔の放出を促し、神経の损伤によって活性化されたミクログリア上のプリン受容体を刺激して痛みを増悪させます。これら一连の仕组みによって、副肾皮质ホルモンの分泌が上昇する时间帯に强い痛みが引き起こされます。
今回研究対象にした「神経障害性疼痛」以外にも、様々な疾患の症状に概日リズムが认められています。私たちは体内时计の视点から病気のリズムの仕组みを解明し、新しい治疗薬の开発や疾患の予防に役立てていきたいと考えています。