Research Results 研究成果
ポイント:
◆世界有数の内部波の発生域であるルソン海峡で、学术研究船「白凤丸」航海による物理?生化学的海洋観测を実施した。
◆乱流混合が亜热帯贫栄养海域であるルソン海峡の生物生产に寄与している可能性を初めて示唆した。
◆亜热帯海域?黒潮域の生物生产を支えるプロセスとして、海峡域で强化される乱流混合の果たす役割が注目される。
九州大学、東京大学、富山大学、フィリピン大学の国際共同研究チームは、ルソン海峡において、2017年11月に学術研究船「白鳳丸」(注1) KH-17-5次レグ2航海(主席研究者:九州大学応用力学研究所特任教授 松野 健※当時)を用いた物理?生物化学的海洋観測を実施しました。内部波が生じる海洋乱流(注2)が気候変動に果たす役割の理解のために、ルソン海峡では近年世界的なチームによって大規模な研究が実施され、世界でも最大規模の内部波が発生していることが明らかにされています。本研究航海では、内部波に起因する乱流混合が海洋生態系に及ぼす影響に注目した調査?解析を行いました。その結果、調査海域は黒潮を起源とする貧栄養な水に覆われているにも関わらず、表層に明瞭な植物プランクトンブルーム(局所的な増殖)が形成されていることを発見するとともに、このブルームが、急峻な地形によって生じた内部波が崩れることで乱流混合が下層の栄養塩を表層に供給することで形成されている可能性を示しました。本研究の結果は、急峻な地形上で強められる乱流混合が生物生産に重要な役割を担う可能性を示唆し、亜熱帯や黒潮流域など貧栄養海域の生物生産性の理解に向けて、東シナ海や日本南岸などの急峻な地形が存在する海域における今後の研究の展開が期待されます。
注1:学术研究船「白凤丸」
海洋研究开発机构が保有?运航し、文部科学省の共同利用?研究拠点である大気海洋研究拠点(东京大学大気海洋研究所)が全国の研究者の共同利用?共同研究に提供する研究船。&苍产蝉辫;
注2:内部波
海洋の浅い水深にある軽い水と深い水深にある重い水の间で起こる波。大気と海洋の间の波が海岸で崩れ白波を生じるように、内部波は海山や海岭などの地形上で崩れる际に微细な涡(乱流)を生じ、その结果として铅直方向の混合が生じる。