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Research Results 研究成果

海底热水鉱床の初期形成プロセスに微生物活动が寄与

―海底下鉱床形成モデルを书き换える可能性― 2020.10.14
研究成果Physics & Chemistry

1. 発表のポイント
◆ 中部沖縄トラフ海底熱水鉱床から、極めて低い硫黄同位体比組成を示す黄鉄鉱粒子を発見した。
◆ 硫黄同位体比の値から、微生物活動による海水の硫酸還元プロセスにより生成された硫黄を材料としていることが明らかとなった。
◆ 海底熱水鉱床の初期形成プロセスの一部は、微生物活動によって誘発?促進されていることが明らかとなった。

2.概要
 国立研究开発法人海洋研究开発机构(理事长 松永 是)海洋机能利用部门海底资源センターの野崎达生グループリーダー代理らは、国立大学法人神戸大学、学校法人千叶工业大学、国立大学法人东北大学、国立大学法人九州大学と共同で、中部冲縄トラフの海底热水鉱床(※1)から採取された试料(図1、2)を详细に分析した结果、极めて低い硫黄同位体比组成(诲34厂)(※2)を持つ黄鉄鉱(贵别厂2)粒子を発见し、微生物活动に由来するものであることを明らかにしました。
 これまで、海底热水鉱床を构成する硫化鉱物の沉殿や酸化?溶解に数多の微生物活动が関与しているであろうことは推测されていましたが、鉱床の形成プロセスと照らし合わせてその特定が试みられたことはありませんでした。そこで本研究では、地球深部探査船「ちきゅう」の航海で得られた掘削コア(※3)および热水喷出孔のチムニー(※4)试料を対象として、详细な顕微镜観察や鉱物组成测定、局所硫黄同位体分析を実施しました。
 掘削コア试料に含まれる黄鉄鉱粒子は、热水活动の重复によって鉱化作用が进む(鉱床が成长する)につれて、フランボイダル(※5)、コロフォーム(※6)、自形(※7)の组织?形状を示します(図3、4)。これらの黄鉄鉱粒子について、二次イオン质量分析装置(厂滨惭厂)を用いた局所硫黄同位体分析を行った结果、フランボイダル黄鉄鉱は最低で–38.9‰(パーミル:千分率)という极めて低い同位体比组成を有し、フランボイダル?コロフォーム?自形と组织?形状が変わるにつれて、高い硫黄同位体比组成に渐移することがわかりました(図5、6)。
 このような大きな硫黄の同位体分别を起こし得るメカニズムは、硫酸还元バクテリアによる海水の硫酸还元プロセスしか知られていません。また、低い硫黄同位体比组成を持つフランボイダル黄鉄鉱は、鉱化作用が进むにつれて海底热水鉱床を构成する黄铜鉱(颁耻贵别厂2)、方铅鉱(笔产厂)、闪亜铅鉱(窜苍厂)などの他の硫化鉱物(※8)によってしばしば置换されています(図4)。したがって、フランボイダル黄鉄鉱は海底热水鉱床を构成する硫化鉱物の出発物质?核として机能しており、鉄や硫黄などの材料を供给していると考えられます。この初期出発物质であるフランボイダル黄鉄鉱は、微生物による硫酸还元プロセスを経た硫黄を材料としていることから、海底热水鉱床の初期形成プロセスには海底下の微生物活动が重要な役割をしており、鉱床生成を诱発?促进していると考えられます。
 今后、他の海域の掘削コア试料や33厂?36厂も含めたマルチ硫黄同位体分析を行い、海底热水鉱床生成と微生物活动寄与の详细を解明していく予定です。
 本成果は、米国のThe Geological Society of America(GSA)が発行する学術雑誌「Geology」に10月7日付けで掲載されました。

図1 本研究に用いた试料の採取位置図。伊是名海穴の掘削コア试料はハクレイサイトから、伊平屋北海丘の掘削コア?チムニー试料はオリジナルサイトから採取された。

図2 本研究に用いた伊是名海穴ハクレイサイトおよび伊平屋北海丘オリジナルサイトの掘削コア试料断面写真。

図3 成熟度?鉱化ステージに応じて様々な组织?形状を示す黄鉄鉱粒子。础~颁は伊是名海穴の掘削コア试料、顿は伊平屋北海丘の掘削コア试料、贰?贵は伊平屋北海丘のチムニー试料。

図4 フランボイダル黄鉄鉱が、黄铜鉱や方铅鉱に置换されている様子を示す后方电子散乱画像。试料は伊平屋北海丘の掘削コア试料。

図5 二次イオン质量分析装置により测定した各黄鉄鉱粒子の硫黄同位体比组成の例。础?叠は伊是名海穴の掘削コア试料、颁は伊平屋北海丘の掘削コア试料、顿は伊平屋北海丘のチムニー试料。

図6 黄鉄鉱粒子の硫黄同位体比组成(?34厂)のヒストグラム。苍は分析した黄鉄鉱粒子の数。

论文情报

タイトル:
着者名:野崎达生、长瀬敏郎、牛久保孝行、清水健二、石桥纯一郎、地球深部探査船「ちきゅう」第909次航海乗船研究者
掲载誌:骋别辞濒辞驳测
顿翱滨:10.1130/骋47943.1

补足説明

※1 海底熱水鉱床:海底火山活動に伴って湧出する熱水から沈殿した鉱床。鉱床とは、資源として利用できる元素や石油?天然ガスなどが濃縮している场所で、採掘して採算が取れるものを指す。したがって、商業開発に至っていない海底熱水鉱床を『鉱床』と記すのは語弊があるが、Seafloor hydrothermal depositに相当する他の適当な訳語が存在しないため、海底熱水鉱床という用語を使用した。
※2 硫黄同位体比組成(d34S): 試料の34S/32Sから標準物質の34S/32Sの差分を取り、それを標準物質の34S/32Sで割り算して、1000を掛けたもの(=千分率を取ったもの)。式で表すと
d34S = ((34S/32S)sample-(34S/32S)standard))/((34S/32S)standard) x 1000
標準物質として、本研究ではVienna-Canyon Diablo Troilite(VCDT)を使用している。d34Sの単位はパーミル(‰:千分率)(参考;パーセント、%:百分率)。
※3 掘削コア:掘削作业により得られた柱状地质试料のこと。通常の掘削作业で使用されるドリルビットとは形状が异なり、真ん中に穴が开いているコアビットを用いて掘削することで、穴の开いた部分に円柱状の岩石が入り込んでいき、それが掘削コア试料としてとして回収される。
※4 チムニー: 海底の熱水活動によって供給された金属元素が、海底面上で硫化鉱物、酸化鉱物、珪酸塩鉱物、硫酸塩鉱物などとして沈殿し、熱水噴出孔の周囲に形成される煙突状の鉱体。チムニー(chimney)とは英語で煙突を意味する。
※5 フランボイダル组织:顕微镜的な球状鉱物の集合(蹿谤补尘产辞颈诲)した组织。
※6 コロフォーム组织:微粒子が同心円縞状に沉积した鉱物组织。颁辞濒濒辞颈诲补濒组织ともいわれ、コロイドからの沉殿组织であるが、溶液から直接结晶化が进んでこの组织ができる场合もある。集合形态により、ぶどう状?肾臓状?乳房状などとなり、低温生成の鉱物に多い。
※7 自形:鉱物固有の结晶面がよく発达している形を形容する语。対义语は他形。
※8 硫化鉱物:鉱物の分类上で、硫黄と结合している鉱物群。本研究に用いた掘削コアおよびチムニー试料は、主に黄铜鉱(颁耻贵别厂2)、闪亜铅鉱(窜苍厂)、方铅鉱(笔产厂)、黄鉄鉱(贵别厂2)などから构成される。

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