伊人直播app

Research Results 研究成果

新しいアストロサイト亜集団を発见

~これまでの痛覚制御メカニズムの定説が変わる?~ 2020.10.06
研究成果Life & Health

 今から約160年前、グリア細胞※の一つであるアストロサイトは神経と神経のすき間を埋めるものとされ、長らくその役割は不明でした。しかし近年になり、アストロサイトは神経の働きに大切な細胞で、病気にも深く関わることが徐々にわかってきました。脳や脊髄は多くの场所で区分けされており、神経の種類と役割もそれぞれで異なります。アストロサイトも脳や脊髄全体に分布していますが、神経のようにそれぞれの场所で種類と役割が違うのでしょうか?
 九州大学大学院薬学研究院ライフイノベーション分野の津田誠主幹教授、高露雄太特任助教、松田烈士大学院生(当時)、吉原康平大学院生らの研究グループは、皮膚の感覚信号を脳へ伝える脊髄の後角という场所の「表層」に他の層とは違うアストロサイトが存在することを世界で初めて発見し、この細胞を刺激すると痛覚過敏になることを明らかにしました。しかし不思議なことに、このアストロサイトは、痛みを抑えるとされてきたノルアドレナリン神経で刺激されることもわかりました。すなわち、これまで痛みを抑える作用が常識であったノルアドレナリン神経に、まったく逆の作用があることがこのアストロサイトの発見により明らかとなったのです。
 镇痛薬として処方されるデュロキセチンはノルアドレナリン神経に作用します。もし今回の発见が本当であれば、このアストロサイトの働きを弱めることで、デュロキセチンの镇痛作用を高めることができるはずです。そこで私たちは、この仮説を検証するために、アストロサイトの活动を弱めたマウスを作製し、确かにデュロキセチンの镇痛作用が高まることを実証しました。
 私たちは新しいアストロサイトを発见し、その细胞の研究から新しい痛覚制御メカニズムを明らかにしました。この成果により、镇痛薬のポテンシャルを効率よく引き出す新しい医薬品の开発に繋がることが期待されます。
 本研究成果は、2020年10月6日(火)午前1時(日本時間)に米国科学誌『Nature Neuroscience』のオンライン版で公開されます。

※グリア细胞:神経系を构成する非神経细胞。これまでは神経细胞を补佐する细胞とされてきたが、近年は神経活动や神経疾患に积极的に関与することが次々と报告され、世界の注目を集めている。

 

私たちが普段感じている痛みは、危険な环境や刺激から身を守るために必要な感覚です。
しかし、私たちの身体には痛みを弱める仕组みもあります。それを担うのが、脳の青斑核から脊髄の后角に伸びる「ノルアドレナリン神経」です。
これまで、この神経には痛みを弱める働きだけがあると考えられてきましたが、今回私たちが発见した新しいアストロサイト亜集団の研究から、ノルアドレナリン神経がアストロサイトを介して痛みを强める作用も持っていることが明らかになりました。

研究者からひとこと

アストロサイトの特定の集団に着目することで、脳から脊髄を介した痛みを强める経路を新たに発见しました。今后は、この経路が既存の镇痛薬に及ぼす影响を明らにし、新たな镇痛薬や镇痛补助薬の开発につなげたいと思います。

论文情报

, Nature Neuroscience
顿翱滨:10.1038/蝉41593-020-00713-4


研究に関するお问い合わせ先