Research Results 研究成果
お米、麺類、パンには毎日食べられる美味しさがあり、塩分と共に食べることで食欲をそそります。また、糖類の甘さと人工甘味料の甘さには違いがあり、糖類の方が断然美味しく感じられます。九州大学五感応用デバイス研究開発センター 安松啓子 特任准教授(現東京歯科大学短期大学 教授)、同センター 二ノ宮裕三 特任教授らの研究グループは、これらの現象の根底にあるグルコース(ブドウ糖)のセンサーが舌の味細胞にあり、その細胞につながって他の味との違いを伝える神経が存在することを解明しました。
研究グループが調査したところ、マウス鼓索神経にはその神経が全ての甘味神経中約3割に存在し、そのグルコース応答は10 mmol(ミリモル)/LNaClを添加すると増強し、ナトリウム-グルコース共輸送体(SGLTs)阻害剤のフロリジンによって抑制され、また、人工甘味料には応答しませんでした。他の甘味神経のうち約3割はフロリジンが効かず、甘味うま味受容体T1R3を発現しないT1R3-KOマウスで見られなくなり、残りの約4割は人工甘味料とグルコースの両方に応答し、フロリジンでグルコース応答が抑制されました。マウスが糖と人工甘味料を区別できるということは同研究グループが以前報告していましたが、その要因は今回見つかったSGLTsとその味を伝える特異的な神経の働きによるものであると考えられます。さらに、T1R3-KOマウスでは正常マウスと同様に舌の味覚のみによるインスリン分泌が報告されていますので、このセンサーと神経は、糖によるインスリン分泌に重要な役割を果たすと思われます。
同研究グループが既に报告した味覚器による脂肪の感知と同様に、糖も栄养素として口腔内で感知されるシステムが备わっていることが証明されました。今后、消化吸収や血糖コントロールへの味覚の関与と、糖に対する美味しさや嗜癖のメカニズムの解明につながると期待されます。
本成果は「Acta physiologica」に速報版が令和2年6月29日(月)(日本時間)に掲載されました。
(参考図)炭水化物は唾液アミラーゼや味细胞膜にある二糖类分解酵素によってグルコースとなり、甘味细胞を刺激する。厂骋尝罢蝉を特异的に発现する甘味细胞とつながる神経は糖类の検出、罢1搁2+罢1搁3を発现する细胞とつながる神経は甘味全般の情报を脳に伝えることが示唆された。
唾液中にも狈补颁濒があり、その浓度で十分グルコース応答が増强しますが、水分の多い食品、例えばおにぎりやお汁粉に塩を足せば、确実に増强が起こりおいしくなります。将来インスリン分泌との関连や、砂糖依存との関连など、生活习惯病とのつながりも明らかになると期待しています。