Research Results 研究成果
九州大学大学院工学研究院 地球資源システム工学部門/カーボンニュートラル?エネルギー国際研究所の 辻 健 教授、池田 達紀 助教、大学院工学府修士課程2年の末本 雄大 大学院生(研究当時)は、火星に設置された地震計のデータを解析し、火星の微動(微弱な振動)の発生メカニズムを明らかにしました。さらにその微動を用いて、火星の地下構造を探査することに成功しました。
最近、「火星で地震が起こっている」というニュースを闻かれた方もいらっしゃるかと思います。これは2018年11月に火星に着陆した狈础厂础の火星探査机インサイトによる成果です。この探査机には、地震计に加えて、温度计や风向?风速计など、様々な観测装置が设置されています。
研究グループは、この探査機に搭載された地震計を用いて、微動の発生メカニズムを明らかにしました。微動に含まれる実体波(注1)は、探査機から遠い场所の風の影響を受けていることが分かりました。一方で、微動に含まれる表面波は、探査機周辺の風によって励起されていることが分かりました。
また、高い周波数(短い波長)の微動(約1 Hz以上)を計測したところ、探査機からの振動が卓越していることが分かりました。これは、探査機の振動ノイズであり、通常は利用しません。しかし研究グループは、このノイズを震源に利用することで、火星内部の地下構造を調べ、その結果から、着陸地点の地下にある地層を可視化することに成功しました。さらに風に励起される微動は、表層の柔らかい地層ではなく、深部の基盤を伝達してきたこと等が明らかになりました。
今回の结果から、火星の地下构造の探査に、微动を利用できることが分かりました。つまり、地震计を设置するだけで、火星の地下构造を调べることができることになります。火星には资源があります。例えば、火星には氷があると考えられていますが、氷(水)は宇宙空间では贵重な资源になります。このような惑星での资源の获得は、今后の宇宙空间での活动を支える上で重要です。今后も、宇宙资源の探査?开発を行う上で必要となる技术の研究を进めてまいります。
本研究は、JSPS科学研究費補助金(JP20H01997)の助成を受けました。この成果は2020年6月15日(月)(米国時間)に米国の科学誌『Geophysical Research Letters』のオンライン版に掲載されました。
(注1:実体波は物质内部(火星深部)を伝わる波で、表面波は物质(火星)表面を伝わる波)
図.(左)探査機の模式図 (NASA /JPL-Caltech).
(下)火星で记録された微动の特徴.
夜空に小さな点にしか见えない火星の表面で地震计がデータを记録し、そのデータが地球に送られていることに惊きませんか?このような技术の発展により、宇宙空间が近くなりました。それに伴い、宇宙空间での资源确保といった新たな研究课题も生まれました。我々は、宇宙での资源开発に必要な技术要素の确立?惑星の理解に向けたサイエンスを今后も进めてまいります。