Research Results 研究成果
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防?治疗や、乳がん、肺がん等の骨転移を予防する薬剤(ビスホスホネート系薬剤、デノスマブ等)は幅広く用いられていますが、抜歯等の后に顎の骨が壊死する副作用があります。薬剤関连顎骨壊死(がっこつえし)と呼ばれるこの疾患は骨粗鬆症の治疗を受けているお年寄りには幅広く知られており、また、日本中のほぼ全ての歯科医院の待合室に注意书きのポスターが掲示されています。薬剤関连顎骨壊死は决して稀ではない疾患ながら、治疗法がないことから、これらの薬剤を使用している患者さんの歯科治疗にとって大きな问题となっています。九州大学大学院歯学研究院の鮎川保则准教授、古谷野洁教授、大学院歯学府歯学専攻4年の足立奈织美大学院生らのグループは、脂质异常症治疗薬(悪玉コレステロールを下げる薬)の一种であるフルバスタチンが顎骨壊死の発症を抑えることを発见しました。
ラットにビスホスホネート系薬剤のゾレドロン酸と副肾皮质ホルモンのデキサメタゾンを注射した后で歯を抜くと顎骨壊死が発症しますが、抜歯の际に歯肉にフルバスタチンを注射しておくと、顎骨壊死が起こらないか、起こっても非常に軽度で済むことが明らかになりました。
ビスホスホネート系薬剤は幅広く使われているため、多くの患者さんが、抜歯等による顎骨壊死を発症する恐れがありますが、长い间安全にコレステロールの治疗に使われているフルバスタチンの投与が顎骨壊死を抑制するというこの研究结果により、歯科治疗の安全性が向上することが期待されます。
本研究は九州大学病院ARO次世代医療センターからの支援を受けており、成果は2020年3月27日(金)19:00(日本時間)に英科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。
※なお、フルバスタチンは悪玉コレステロールを下げるために一般的に用いられる薬剤で、内服で使用されています。しかし、ただフルバスタチンを内服するだけでは薬剤関连顎骨壊死は全く予防できませんのでご注意ください。
(参考図)
①歯科医院待合室の掲示
②a. 薬剤関連顎骨壊死ラット口腔内。抜歯した後骨壊死を起こしている。b. CT像。歯根の形の骨欠損が残存しており、骨が治癒していない。
③a. ②のラットに抜歯時フルバスタチンを注射したもの。歯肉が治癒している。b. CT像。骨の治癒が進行している。
现在歯科领域において最も困难かつ身近な疾患の一つです。本疾患の予防?治疗に贡献したいと考えています。