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Research Results 研究成果

小惑星イトカワで発达した金属鉄のひげ状结晶–宇宙における鉄と硫黄の化学进化を知る键-

2020.03.11
研究成果Physics & ChemistryMaterials

 日本学術振興会特別研究員の松本徹研究員および九州大学基干教育院野口高明教授、ドイツのイエナ大学のHarries研究員とLangenhorst教授、京都大学理学研究科の三宅准教授の研究グループは、探査機はやぶさが小惑星イトカワから持ち帰った微粒子の表面に、地球外物質では全く知られていない、ひげ状に伸びた金属鉄の結晶を発見しました。金属鉄のひげ状結晶は、太陽から吹き出した荷電粒子である太陽風の打ち込みが硫化鉄(FeS)を分解させることで成長したと考えられます。この考察から、荷電粒子の照射が宇宙における硫黄と鉄の化学進化に大きな役割を果たした可能性を示しました。
 硫化鉄は小惑星や彗星の物质に豊富に含まれますが、その天体表面での変化はよく分かっていませんでした。研究グループは、イトカワ微粒子に含まれる硫化鉄の表面を电子顕微镜で観察し、金属鉄のひげ状结晶が硫化鉄表面に広く分布することを発见しました(図)。硫化鉄の表面は硫黄の量が少ないことから、太阳风の照射によって硫化鉄中の硫黄原子が选択的に失われ、鉄原子が过剰になった结果、金属鉄が成长したと推定しました。
 小惑星表面は硫黄に欠乏することが観测から示唆されており、本研究は硫黄の消失が実际に起きる証拠とその仕组みを初めて示しました。この成果は、小天体の形成史や、生命にとって重要な地球への硫黄の输送量の理解につながると期待されます。一方、恒星の间の空间(星间空间)では、荷电粒子の照射が硫化鉄の尘を分解し、金属鉄と硫黄の分离を引き起こすと予想されてきました。本研究はこの仮説を强く支持し、太阳系の材料となった星间空间の硫黄と鉄の挙动に対する理解を前进させました。
 研究成果は、「Nature Communications」に2020年2月28日付でオンライン公開されました。

(図)イトカワ微粒子の走査型电子顕微镜写真。わかりやすさのため画像を着色しています。(左)分析したイトカワ粒子のひとつ。硫化鉄(紫色)とケイ酸塩(緑色)で构成されます。(中央)硫化鉄(紫色)表面の金属鉄のひげ状结晶(青色)。(右)ひげ状结晶の拡大図。

研究者からひとこと

金属がひげ状に成长する仕组みは材料学的にも谜が多く、本研究をきっかけにさらなる分析が期待されます(松本)。

论文情报

,Nature Communications,
10.1038/s41467-020-14758-3

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