Research Results 研究成果
「社会的ひきこもり(以下、ひきこもり)」は、6ヶ月以上にわたり就労?学业など社会参加を回避し自宅に留まっている现象のことを一般的に指しています。うつ病や统合失调症など精神疾患の併存も珍しくありませんが、精神疾患の症状によってひきこもる场合には「ひきこもり」に含まないという意见もあり、「ひきこもり」の定义に精神疾患を含むかどうかは以前から议论の的でした。2010年に厚生労働省より発行された「ひきこもりの评価?支援に関するガイドライン」の定义の中には、「原则として统合失调症の阳性あるいは阴性症状に基づくひきこもり状态とは一线を画した非精神病性の现象とするが、実际には确定诊断がなされる前の统合失调症が含まれている可能性は低くないことに留意すべきである。」と记载されています。また、ひきこもり者の回避状态を评価することは容易ではなく、「することがないから家にいるだけで、人を避けているわけではない」とか「直接人と会うことはないけど、ネットでは友达がたくさんいる」と诉えて支援を求めないケースも稀ではありません。他方、最近では海外でもひきこもりに类する现象が多くの国で报告されており、国际的に通用する「ひきこもり」の评価基準が求められています。
今回、日本医療研究開発機構 (AMED) ?障害者対策総合研究開発事業および文部科学省科研費?新学術領域研究「意志動力学」の支援により、九州大学病院精神科神経科の加藤隆弘 講師、神庭重信 名誉教授(精神医学)、米国オレゴン健康科学大学のアラン テオ 准教授(精神医学)は、これまでの問題点を整理し、国際的に通用する病的な「ひきこもり(hikikomori: pathological social withdrawal)」の診断評価基準を新たに開発しました。
今回の定义では、物理的撤退を必须条件とし、それ以外を补足项目とし、回避や併存疾患の有无を问わないとすることで、これまでの混乱の解决を図りました。定义の要点を以下に记します。
「病的な社会的回避または社会的孤立の状态であり、大前提として自宅に居留まり、物理的に孤立している状况である。こうした状况に対して本人が苦悩しているか、机能障害があるか、あるいは、家族?周囲が苦悩しているということが必须项目である。6ヶ月以上を病的な「ひきこもり(丑颈办颈办辞尘辞谤颈)」とし、3ヶ月以上6ヶ月未満を「前ひきこもり(辫谤别-丑颈办颈办辞尘辞谤颈)」とする。外出频度が週2-3回を軽度、週1回以下を中等度、週1回以下で、かつ自室からほとんど出ない场合を重度とする。必须项目ではないが、孤独感の有无、社会的参加の欠如、直接的な対人交流の欠如、间接的な対人交流の有无、および併存症の有无の评価は重要である。」
今回の基準により、支援が必要なひきこもり状態にあるかどうかを周囲の観察によりスムーズに判断できるようになります。さらに、本人に対して補足項目まで評価することで、一人一人の状態評価に基づく適切な支援を提供しやすくなることが期待されます。本研究成果は、令和2年1月10日に、120ヶ国が加盟する世界精神医学会(WPA:World Psychiatric Association)の発行する国際学術雑誌「World Psychiatry」のオンライン版に掲載されました。
参考図
今回の基準が、海外に拡がりつつある若者のひきこもり様の现象や世界的问题である社会的孤立を把握するための国际疫学调査に活用されることで、ひきこもり国际化の実态把握に贡献することが期待されます。さらに、今回新たに「前ひきこもり」状态を评価基準に加えたことで、ひきこもりの予防や早期支援に向けた新しい支援体制の构筑が期待されます。