Research Results 研究成果
神経性やせ症は、ダイエットなどを契机に発症して、极度の低体重を呈する病気です。この病気は、有効な治疗法が限られており、病态の解明や新たな治疗法の开発が喫紧の课题となっています。これまでの研究で、神経性やせ症では肠内细菌丛(※1)に异常があることが知られていましたが、その异常が病态にどのように影响するかについては不明でした。
この问题を検讨するため、九州大学病院の波夛伴和助教、九州大学大学院医学研究院の须藤信行教授の研究グループは、东海大学医学部の感染症学教室、精神科学教室と共同研究を行いました。同グループは、无菌マウスに神経性やせ症女性患者または健常女性の粪便を移植して、ヒト型の肠内细菌丛をもつ人工菌丛マウス(やせ症型マウス、健常型マウス)を作製しました。无菌アイソレーター(※2)内で、これらのマウスの体重増加率を経时的に测定し、行动特性を评価しました。その结果、やせ症型マウスは、健常型マウスと比べて体重増加が不良であり、不安様行动が高いことが分かりました。また、やせ症型マウスでは、バクテロイデス属というグループの肠内细菌が减少しており、同じグループの肠内细菌を投与すると不安様行动は正常化しました。
神経性やせ症の低体重期では、1)食物効率が低い(体重増加のために多くの食物摂取を要す)、2)精神症状(强い不安や强迫性)を合併することが知られています。今回の研究结果は、これら神経性やせ症に特徴的な病态の一端を明らかにするとともに、体重増加を目的とした新たな治疗法の开発に寄与するものです。
本研究成果は、2019年8月26日(月)に米国内分泌学会雑誌「贰苍诲辞肠谤颈苍辞濒辞驳测」でオンライン公开されました。なお、本研究は科研费:新学术领域研究(16贬06404)、基盘研究B(16贬05278)、挑戦的萌芽研究(16碍15413)の支援を受けて実施しました。
左図:4週齢の体重を100% としたときの
体重増加率(下の数字は週齢)
?「やせ症型マウス」は体重が増えにくい
右図:不安様行动を评価する[ガラス玉覆い
隠し试験](※3)で隠した个数
?「やせ症型マウス」は不安様行动が高い
无菌アイソレーター: マウスを微生物や寄生虫から隔离した环境で饲育するための装置です。吸排気装置にそれぞれ高性能フィルターを用い、完全に无菌の状态を保つことができます。
ガラス玉覆い隠し試験(Marble-burying test):マウスの不安様行動(特に強迫行動)を評価する方法です。敷き詰めた床敷きの上に置いた20個のガラス玉を、20分間に覆い隠した個数を数えます。数が多いほど、不安様行動(強迫性)が高いと評価します。
ヒト型の人工菌丛マウスを作製する际、冻结粪便ではなく新鲜粪便を使用しました。その结果、マウスの肠内细菌丛が、冻结粪便を用いた场合と比べ、ドナーの肠内细菌丛に近似しており、よりヒトに近い动物モデルを作製することができました。