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Research Results 研究成果

局所麻酔薬が脂質ラフトを破壊 ~麻酔作用発現に関する新たなメカニズムの提案~

2019.06.26
研究成果Life & Health

 九州大学大学院理学研究院の木下祥尚助教と松森信明教授らの研究グループは、细胞膜に存在する脂质ラフトと呼ばれる固い膜领域が局所麻酔薬によって破壊されることを见出し(図1左)、局所麻酔薬の作用発现に脂质ラフトの破壊が関与しているとの新たな仮説を提唱しました。
 局所麻酔薬や全身麻酔薬の作用机构は现在でも十分解明されておらず、多方面から研究が行われています。局所麻酔薬はイオンチャネル(生体膜を贯通するタンパク质の中で、ナトリウムイオンやカリウムイオンなどの特定のイオンを透过させる役割を持つタンパク质)に作用することで神経伝达をブロックし、麻酔作用を発现すると考えられてきました。一方で、局所麻酔に関与するイオンチャネルは脂质ラフトに存在し机能することが报告されています。そこで、我々は、脂质ラフトを模した人工脂质膜に対し代表的な局所麻酔薬であるジブカインやテトラカイン、リドカインを外部から添加しました。その结果、ジブカインやテトラカインは脂质ラフトに相当する领域を効率的に破壊するのに対し、リドカインの影响は小さいことがわかりました(図1右)。兴味深いことに、局所麻酔薬のラフト破壊は麻酔作用の强度と相関していました。また齿线の実験により、ジブカインやテトラカインは膜の奥深くに侵入することで固い脂质ラフトを効率的に乱すのに対し、リドカインは膜表面付近に存在するため脂质ラフトに及ぼす影响が小さいことがわかりました。以上の结果、イオンチャネルが机能する场である脂质ラフトが局所麻酔薬によって破壊されるため、イオンチャネルの活性が抑制され、麻酔作用が発现するとの新たな仮説を提案しました。この成果は、新たな局所麻酔薬の开発の指针になると期待されます。
 本研究は科研費(JP15H03121、JP16H00773、JP17K15107)などの支援を受けて実施しました。本成果は令和元年6月15日(土)(日本時間)に学術誌Biochimica et Biophysica Acta ?General Subjectsのオンライン版に掲載されました。

図1. (左)局所麻酔薬によるラフト破壊の模式図。(右)ラフト/非ラフト様相分離膜に対する局所麻酔薬の影響。相分離膜にジブカインやテトラカインを添加すると、ラフトが破壊され、膜全体が均一になる。リドカインを加えても相分離は解消しない。

研究者からひとこと

なぜ、ジブカインは効率的にラフトを阻害するのか?当初、ジブカインのラフトへの结合量が多いからではないかと考えていました。しかし実际に测定してみると、ジブカインは3种类の麻酔薬の中で膜に最も结合量が少ないことがわかりました。このように、実験では予想外の结果が得られることがよくあり、そのたびに新たな仮説をたてて実験を进めていくところが兴味深いです。(木下)

论文情报

,Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - General Subjects,
https://doi.org/10.1016/j.bbagen.2019.06.008

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