Research Results 研究成果
九州大学薬学研究院の王子田彰夫教授、进藤直哉助教、小野眞弓教授、大戸茂弘教授、长崎国际大学薬学部の山口泰史教授、名古屋大学名トランスフォーマティブ生命分子研究所の桑田启子助教、京都大学大学院工学研究科の浜地格教授らの研究グループは、化学反応でタンパク质の机能を阻害する新しい分子デザインを见出し、これを応用して强い薬効と高い安全性を併せ持つ抗がん剤が开発できることを発见しました。
低分子の薬剤は一般に、病気を引き起こす原因となるタンパク质の机能を阻害することで、その効き目を発挥します。化学反応によってタンパク质と结びつき、その机能を不可逆的に阻害するコバレントドラッグ(共有结合阻害剤)は、开発例は少ないものの、强力で持続する薬効を示すことから、近年、抗がん剤开発において大きな注目を集めています。しかし、その一方で、コバレントドラッグは、标的以外のタンパク质と非特异的に反応することで副作用を起こす可能性が悬念されてきました。本研究では、このような非特异反応による副作用のリスクを軽减できる新しい颁贵础反応基を见出し、これをコバレントドラッグ型の抗がん剤开発に応用しました。得られた抗がん剤は、既存のコバレントドラッグよりも高选択的に标的タンパク质と反応して、その机能を特异的に阻害し、マウスを用いた投与试験でも强い薬効と低い毒性を発挥しました。その他にも我々は、颁贵础反応基が広い浓度范囲にわたって标的タンパク质に対する反応特异性を维持できること、非特异反応が可逆的であることなど、従来の反応基とは异なる优れた特性を持つことを见出しました。本研究により开発された颁贵础反応基を用いるコバレントドラッグデザインは、今后、がんのみでなく様々な疾患を治疗できる创薬へ応用することが期待されます。
本研究の成果は、日本学術振興会科研費新学術領域研究「分子夾雑の生命化学(領域代表者:浜地格)」(課題番号JP17H06349)、 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS) (課題番号JP18am0101091)などの支援により得られたものです。
本研究の成果は、2019年1月14日午後4時(英国時間)に英国科学雑誌「Nature Chemical Biology」で公開されました。
図1:颁贵础反応基を持つ薬分子は标的タンパク质のシステインと特异的に化学反応し、その机能を阻害する。
図2:开発した抗がん剤が标的である贰骋贵搁タンパク质に结合している様子。
今回の研究は、我々のアイデアの発案から5年以上の歳月をかけてようやく完成しました。ほとんどノウハウのないところからのスタートでしたが、九州大学薬学研究院の研究力を集结し、さらに他大学の研究者の协力を得て、インパクトある大学独自のアカデミア创薬研究の成果を创出できたと感じています。