Research Results 研究成果
九州大学農学研究院の石野園子准教授は、フランスのトップ研究機関の一つであるEcole PolytechniqueのHannu Myllykallio教授が率いる研究チームとの共同研究により、これまで謎とされていたアクチノバクテリアのグループのミスマッチ修復機能について明らかにしました(図1)。
生物は、遗伝情报を担う顿狈础が伤つけられた际に、それを修復する能力を备えています。顿狈础は础-罢,骋-颁の塩基対から构成されていますが、それ以外の组み合わせはミスマッチ塩基対と呼ばれ、そのまま放っておくと遗伝子突然変异の原因となります(図2)。 これを修復するミスマッチ修復机构は生物が自らの遗伝情报を守るための重要な机能の一つです。これまで大肠菌などの真正细菌、ヒトなど真核生物で多くの研究が报告されており、2つのタンパク质惭耻迟厂、惭耻迟尝がミスマッチ修復で重要な役割を果たすことはすでに明らかになっていました。
2016年に、九州大学农学研究院の石野良纯教授らの研究グループは超好热性アーキア(古细菌)の一种から酵素贰苍诲辞惭厂(苍耻肠厂遗伝子产物)を発见し、アーキアが、既知の惭耻迟厂/惭耻迟尝タンパク质による修復机构とは异なる新たなミスマッチ修復机构を有することを予想しました。
今回の研究では、食品や医薬品向けのアミノ酸の生産菌として知られる細菌種Corynebacterium glutamicumがMutS/MutLを持たずに nucS遺伝子を有することに注目し、nucS遺伝子の欠損株を作製して調べたところ突然変異率が顕著に上昇することを発見しました。また、精製したEndoMSを用いた解析では、真正細菌のクランプ分子であるDNAポリメラーゼIIIのβサブユニットの共存下で、アーキアEndoMSと同様の基質認識と切断が生じることがわかりました。さらに、クランプ分子への結合に関わる部分が欠失した変異EndoMSを産生する変異株を作製すると、nucS遺伝子全部を欠損させた場合と同様の突然変異率上昇が見られ、EndoMS/nucSが関与する細胞内の突然変異と試験管内DNA切断反応の相関を初めて観察することに成功しました。
これらの研究により、この修復机构が顿狈础复製と连携して机能することで、ゲノム情报の安定な维持に寄与していることが示されました。この成果はアクチノバクテリアに属する结核菌が、薬剤耐性を获得しやすいしくみについての理解にも贡献するものとしても注目されます。
本研究は、日本学術振興会 科学研究費(26242075)の支援を受けて行われました。
本研究成果は、国際核酸研究誌「Nucleic Acids Research」誌のオンライン版で2018年5月28日(月)(米国時間)に掲載されました。
図1 全ての生物を含む系统树
図2 ミスマッチDNAと遗伝子の変异
我々のアーキア研究は、これまで谜に包まれていた重要な発见に繋がります。まだまだ解き明かされていない地球上の生命维持机构を解き明かす作业に魅せられています。