Research Results 研究成果
九州大学先端素粒子物理研究センターの吉冈瑞树准教授らのグループは、高エネルギー加速器研究机构、名古屋大学、大阪大学、インディアナ大学との共同研究により、茨城県东海村の大强度阳子加速器施设(闯-笔础搁颁(注1))のパルス中性子源(注2)を用いて、原子の大きさ程度の距离に働く未知の力の探索を行いました。
2つの物体の间に働く力には、いわゆる万有引力や电磁気的な力の他に、原子核をつなぎとめる力、原子核を崩壊させる力の、合计4种类が存在していることが知られています。一方で、私たちが生活している空间は、縦横高さの3次元から构成されていますが、ミクロなスケールでは4次元以上の空间(余剰次元(注3))の存在の可能性が理论的に示唆されています。もし、そのような余剰次元が存在するとなると、极めて近い距离に置かれた2つの物体の间に、4つの力では説明できない强い力が働くと予测されますが、これまでそのような力が働いている様が実験的には観测されたことはありませんでした。例えば原子の大きさ程度の距离(0.1ナノメートル(注4))では、ニュートン重力の100垓(注5)倍以上の强い力すら见つけることができていませんでした。
今回研究グループは、中性子と希ガスの原子との间に働く力を探索しました。闯-笔础搁颁の世界最高强度のパルス中性子ビームを用いることで、原子の大きさ(0.1ナノメートル)の距离の领域において、未知の力の探索感度を従来の同様の実験に比べて1桁向上させることに成功しました。研究グループは现在も探索感度のさらなる向上を目指して実験を続けており、今后も余剰次元の探索领域をより広げていくことが期待されます。
本研究は、科学研究费助成事业若手研究(叠)(闯笔25800152)、学术创成研究闯笔19骋厂0210の支援を受けました。
本研究成果は平成30年3月22日(木)付(米国東部時間)米国科学雑誌Physical Review Dに掲載されました。また、本論文は米国物理学会のオンライン誌Physicsでハイライトされました。
注1) 大強度陽子加速器施設(J-PARC)
?エネルギー加速器研究机构と?本原??研究开発机构が茨城県东海村で共同运営している?型研究施设で、素粒?物理学、原?核物理学、物性物理学、化学、材料科学、?物学などの学术的な研究から产业分野への応?研究まで、広范囲の分野での世界最先端の研究が?われている。闯-笔础搁颁内の物质??命科学実験施设では、世界最?强度の中性?ビーム及びミュオンを?いた研究が?われており、世界中から研究者が集まる。
注2) パルス中性子源
闯-笔础搁颁などのようなパルス状に阳子を加速する加速器を利用した中性子源では、阳子ビームがターゲットに入射するタイミングに合わせて中性子を発生させるため、パルス中性子源となる。 今回の実証実験では、闯-笔础搁颁の中性子ビームライン叠尝05を使用した。
注3) 余剰次元
4次元を超える高次元の世界のこと。现段阶では、存在する可能性は仮説のひとつであり、世界各国の研究所で実験的な検証が进められている。
注4) ナノメートル
长さの単位。10亿分の1メートル。
注5) 垓
大きさの単位。1垓は1兆のさらに1亿倍。
(参考図)実験原理の概念図
希ガス标的を封入した容器に、図中左下からパルス中性子ビームを照射し、下流に设置した中性子検出器で中性子の散乱角度分布を精密に测定する。もし余剰次元が存在すると、既知の力のみから予想される分布からズレが生じる。
たとえ余剰次元が见つかったとしてもすぐに私たちの生活が豊かになるわけではありませんが、未知なる次元の存在というのは私たちの时空の构造の理解を大きく変革するため、とても魅力的な実験だと思っています。