Research Results 研究成果
理化学研究所(理研)袖岡有機合成化学研究室の平井剛客員研究員(九州大学大学院薬学研究院教授)、太田英介特別研究員(研究当時)、袖岡幹子主任研究員(環境資源科学研究センター グループディレクター)らの共同研究グループは、薬剤(生物活性分子)の結合タンパク質同定手法の一つである「光親和性標識法」に利用可能な新たな分子ツールとして、2-チエニル置換型α-ケトアミド構造を開発しました。
光亲和性标识法は、生物活性分子の结合タンパク质同定に用いられるケミカルバイオロジー研究には欠かせない手法の一つです。この手法では、光によって结合タンパク质と共有结合を形成する「光反応性基」を用います。従来の光反応性基は十分な反応性を発挥させるために、疎水性で嵩(かさ)高い构造が必要でした。そのため、真の结合タンパク质以外のタンパク质とも非特异的に相互作用し、共有结合を形成するという欠点がありました。しかし、この欠点を克服した新たな光反応性基の开発はほとんど行われてきませんでした。
今回、共同研究グループは、α-ケトアミド构造が光反応性基として机能すると考え、α-ケトアミド构造を生物活性分子としてマンノース构造に连结した分子ツールを作製し、タンパク质のコンカナバリン础との光亲和性标识実験を行いました。その结果、チエニル基を持つα-ケトアミド(2-チエニル置换型α-ケトアミド构造)が良好な反応性を示し、光反応性基として十分机能することを见いだしました。この新しい光反応性基は、従来のものよりも疎水性が低くコンパクトで、非特异的な结合が着しく抑制できることが分かりました。
本成果は生理活性天然物や薬剤だけでなく、ペプチド、タンパク质、糖锁、核酸、脂质など幅広い分子群と结合タンパク质の相互作用の解析に利用可能な分子ツールとして有望と考えられます。また、チエニル基の効果をさらに研究することで、今后、より机能性の高い光反応性基の开発につながると期待できます。
本研究は、米国の科学雑誌『ACS Chemical Biology』オンライン版(2月19日付け)に掲載されました。
図1 光親和性標識法の概略図
図2 代表的な光反応性基
図3 新たに開発した光反応性基:チエニル基置換型α-ケトアミド