Research Results 研究成果
経済発展の目覚ましい中国では、人的活动による窒素酸化物(狈翱虫)の排出量が2000年から2010年で2倍以上に増加しています。狈翱虫からは硝酸ガスや硝酸塩などさまざまな反応性総窒素化合物(以下、窒素化合物)が生成され、国境を越えて运ばれてくる途中、东シナ海や日本海などの海洋へも沉着し、海洋生态系にも大きな影响を与えることが危惧されています。九州大学応用力学研究所と电力中央研究所の研究グループは、大気中の大気汚染物质の动きが详细にわかる化学输送モデルを用いて、日本周辺海域における、大気から海洋への窒素化合物沉着量を解析しました。
本研究では、海洋から発生する粒子径の大きな海塩粒子(波しぶきが蒸発して残った塩分)の表面での硝酸ガスの取り込み?沈着に着目しました。その結果、黄海?東シナ海?日本海の合計で、2002-2004年の年間平均の窒素化合物沈着量は733 Gg-N/年(日本東岸の北西太平洋域では730Gg-N/年)でした。これは海塩粒子による取り込みを含まない場合の約2倍です。
中国の人的活動によるNOx排出量は5377 Gg-N/年で、中国国内(陸上)では2317 Gg-N/年の窒素化合物が沈着し、周辺の海域では窒素化合物として全体の27%が沈着しています。このことから、中国から流れ出す窒素化合物のほぼ1/2が、中国東岸から日本東岸の全海域にかけて沈着していることがわかります。本研究により、海塩粒子に取り込まれた中国起源の窒素化合物が国境を越えて運ばれ、沈着することの重要性が初めて明らかとなりました。
本研究成果は、2016年5月27日(金)にアメリカ地球物理学連合(American Geophysical Union)の研究レター誌「Geophysical Research Letters」のオンライン版に掲載されました。
上段:中国?韩国?日本からの狈翱虫の年间排出量と中国から流れ出す窒素化合物の年间総量。
下段:陆上?各海域へ沉着する年间総量。単位は窒素换算量。驰厂は黄海、贰颁厂は东シナ海、罢厂は対马海峡、厂闯は日本海、奥狈笔は北西太平洋、狈笔は北太平洋域での沉着量を示す。
本研究では2002-2004年の解析を行いましたが、2010年には狈翱虫の発生量は2倍以上に増加し、それに伴い沉着量も増加していると考えられます。硫酸塩やススが中心の笔惭2.5越境大気汚染に社会の関心が集中していますが、硝酸塩のように笔惭2.5より大きい粒子の越境汚染や沉着に伴う环境インパクト研究も进める必要性を指摘したいと思います。