Research Results 研究成果
九州大学生体防御医学研究所の铃木淳史教授と大学院医学系学府博士课程4年の叁浦静の研究グループは、世界で初めて、マウスの皮肤やヒトの血管の细胞に4つの転写因子(贬苍蹿4α、贵辞虫补3、骋补迟补6、颁诲虫2)を导入することで、直接、胎児性の肠前駆细胞へ変化させること(ダイレクトリプログラミング)に成功しました(図1)。
食物の消化や吸収を担う小肠や大肠は、胎児期の肠管を形成する肠前駆细胞が成体型の肠干细胞へと成长することで形成されます。本研究で诱导に成功した胎児性の肠前駆细胞は、培养下で叁次元组织构造体(オルガノイド)を形成して増殖し、成体型の肠干细胞が作るオルガノイドへと成长します(図2)。得られた成体型の肠干细胞は、肠上皮组织を构成するすべての细胞へ分化する能力(多分化能)と长期间自己と同じ细胞を作り続ける能力(自己复製能)を有します。また、诱导した胎児性の肠前駆细胞や成体型の肠干细胞が作るオルガノイドを大肠炎モデルマウスに移植すると、长期间、肠上皮组织を再构筑することが可能です。
肠上皮オルガノイドは、生体外で肠上皮组织を维持?培养できることから、基础研究だけでなく、移植医疗や创薬研究への応用も期待されています。しかしながら、材料となる肠の组织を生体から生きたまま取り出すことは患者さんへの负担が大きく、また、多能性干细胞から分化诱导する场合も复雑な方法が必要です。ダイレクトリプログラミングの手法によって作製される肠前駆细胞を用いることで、これら既存の方法に対し、より简便かつ効率的に肠上皮オルガノイドを取得できるようになると考えられます。今后、作製した肠上皮オルガノイドを用いた肠疾患の病态解析や再生医疗、创薬研究への展开が期待されます。
本研究成果は、2017 年9月22日(金)午前1時(日本時間)に米国科学雑誌『Cell Stem Cell』オンライン版で発表されました。
図1:本研究成果の概略図
図2:皮肤由来(础)と肠由来(叠)の肠上皮オルガノイド
(础)ダイレクトリプログラミングによって作製された肠上皮オルガノイド(成体型)
(叠)成体マウス肠组织由来オルガノイド
私たちはダイレクトリプログラミングの手法を用いて過去に肝細胞を作製することに成功し(Sekiya and Suzuki, Nature, 2011)、今回、腸前駆細胞を作製することにも成功しました。ダイレクトリプログラミングによって作製された細胞が医療や創薬に応用される日を夢見て、これからも研究を頑張ろうと思います。