Research Results 研究成果
九州大学大学院理学研究院の福田順一教授(研究開始時、産業技術総合研究所 機能化学研究部門/機能材料コンピューテショナルデザイン研究センター 主任研究員)は、ウクライナ国立科学アカデミー、リュブリャナ大学(スロベニア)、ヨーゼフシュテファン研究所(同)の研究グループと共同で、液晶の薄膜中においてハーフスカーミオンと呼ばれる渦状の秩序構造が自発的に形成されることを、理論的、実験的に初めて実証しました。
液晶はテレビや携帯电话のディスプレイに用いられる身近な材料ですが、様々な秩序构造を自発的に形成することが知られており、物理学の兴味深い研究対象でもあります。今回着目したスカーミオンは様々な系で现れることが知られていますが、近年特に强磁性体において现れるものが注目を集めています。これまで议论されていた系とは全く异なる液晶の薄膜においてハーフスカーミオンが现れうることを、纯粋な理论计算によって过去に示していましたが、今回の研究では、光学顕微镜による観察に基づいて、数百ナノメートルの大きさのハーフスカーミオンが液晶中に実际に现れることを実験的に実証しました。その际、シミュレーションで得られた液晶の秩序构造が光学顕微镜によってどのように见えるかについて理论计算を行なうことにより、実験で得られた顕微镜像が実际にハーフスカーミオンに由来するものであることを明らかにしました。またハーフスカーミオンは格子を组むことも孤立した粒子のように振る舞うこともできること(参考図)、ハーフスカーミオンの格子は光学顕微镜下で热揺らぎによる明灭を示すことなどの兴味深い振る舞いについても、理论と実験の両面からの考察を行ないました。
本研究は液晶の构造材料、光学材料としての新たな可能性を示し、液晶と他の系(强磁性体など)との类似や相违点に関する新たな视点を与えるとともに、数百ナノメートル程度の微细な构造が光学顕微镜によってどのように见えるかという理论的な难问の解决にもつながる成果です。
本研究は、科学研究費補助金?基盤研究(B)(課題番号:17H02947)などの支援のもとに行われ、2017年8月28日(月)16時(英国時間)に英国科学誌Nature Physicsにオンライン掲載されます。
液晶がつくる涡状の构造(スカーミオン)の模式図。スカーミオンは格子を组むこともあれば(左)、孤立して存在することもある
「数百ナノメートル程度の构造が光学顕微镜でどのように见えるか」を理论的に考察するのは、困难を极めました。顕微镜像の计算手法は、液晶に限らない様々な微细构造の研究に利用できると期待しています。また、液晶は単にディスプレイに使われるだけではない物理学の研究対象としての面白さを秘めていることが、この研究から伝わればと思っています。