Research Results 研究成果
九州大学大学院医学研究院の冈田诚司准教授と医学系学府博士4年?九州大学病院整形外科の原正光医师らの研究グループは、哺乳类の脳や脊髄で伤ついた神経が再生しない主要な原因であるグリア瘢痕の形成メカニズムを解明し、このグリア瘢痕の形成を抑えることが脊髄损伤の新しい治疗法に繋がることを、マウスを使った実験で明らかにしました。
手足などの末梢神経は伤ついても少しずつ再生しますが、脳や脊髄などの中枢神経はほとんど再生しないので、脳梗塞や脊髄损伤后には麻痺などの重い后遗症が残ります。その大きな原因として、哺乳类の中枢神経では损伤部の周りでアストロサイトという细胞が反応してグリア瘢痕と呼ばれるかさぶたのような组织を形成し、神経の再生を妨げることが挙げられます。これまで、このグリア瘢痕が形成される反応は一方通行であり、非可逆的なものと考えられてきましたが、そのメカニズムや瘢痕形成を抑える方法は不明でした。
本研究グループはセルソーターという装置を用いて损伤を加えた脊髄からアストロサイトを选択的に回収し、再度正常な脊髄に移植することで、グリア瘢痕が形成される反応は一方通行ではなく、アストロサイトが置かれた环境によって変化するものであることを証明しました。特に、アストロサイトが1型コラーゲンと反応してカドヘリンという细胞接着因子を発现させることでグリア瘢痕が形成されることを明らかにしました。さらに、この反応を阻害して脊髄损伤后のグリア瘢痕の形成を抑えると、损伤部を越えた神経再生が起こり、麻痺の回復が促进されることを発见しました。本成果により、今后、グリア瘢痕形成をターゲットとした新しい中枢神経损伤の治疗开発が期待されます。
本研究成果は、2017年6月19日(月)午後4時(英国夏時間)に英国科学雑誌『Nature Medicine』オンライン版で発表されました。
(参考図)
グリア瘢痕形成メカニズム:
アストロサイトは1型コラーゲンと反応してグリア瘢痕を形成します。
损伤を受けた脊髄中の神経细胞はグリア瘢痕が邪魔して再生できません。
グリア瘢痕形成が抑えられた脊髄では、损伤部を越えた旺盛な神経再生反応が起こり、麻痺の回復も促进されました。
近年颈笔厂细胞や神経干细胞が中枢神経再生の新しい治疗として期待されていますが、すでにグリア瘢痕が形成された慢性期の患者さんに细胞を移植しても瘢痕が再生を阻害してしまいます。本成果によってグリア瘢痕形成が抑えられるようになると、このような患者さんにも干细胞移植との相乗的な治疗効果が期待できるようになるのではないかと考えられます。