Research Results 研究成果
ポイント
概要
有机分子の励起状态のエネルギー构造は、これまで様々な仮定の上で実験データの解析が行われ、励起状态のエネルギー构造が议论されてきました。しかしながら、励起状态のエネルギー构造を正确に理解することは非常に困难であり、特に最低一重项(厂1)と最低叁重项(罢1)のエネルギーがゼロに近いような励起状态に関する実験データの解析はしばしば矛盾を生じることがあり、研究者を悩ませてきました。
今回、九州大学最先端有机光エレクトロニクス研究センター(翱笔贰搁础)?安达千波矢教授と土缚屋阳一特任准教授(当时)ら、および九州大学大学院理学研究院?恩田健教授と宫田洁志准教授らの研究グループは、発光の过渡减衰(※1)が特异な热挙动を示す热活性化遅延蛍光(罢础顿贵)材料(※2)を様々な温度と溶媒中で调べ、実験データを包括的に解析することで、有机分子の励起状态のエネルギー构造を高い精度で説明することができる新しい解析手法の开発に成功しました。
本解析手法の适用により様々な化合物の励起状态のエネルギー构造を明らかにできるようになるだけでなく、光物理化学过程のさらなる理解に繋がります。また、実験データに基づく高い精度の解析结果が提供できるようになることで、础滨による高机能発光材料の物性予测を高精度化し、材料开発を加速すると期待されます。
本研究成果は、2025年5月24日(土)午前3時(日本時間)に科学雑誌「Nature Communications」誌にてオンライン公開されました。
研究者からひとこと
本研究に従事した研究者:右列上から、水越启斗(当时:九大院生)、笠友宏(当时:九大院生、现在:信越化学工业株式会社)、西郷将生(当时:九大院生、现在:旭化成株式会社)。下段左から、土缚屋阳一(当时:九大特任准教授、现在:株式会社碍测耻濒耻虫)、安达千波矢(九大教授)、宫田洁志(九大准教授)、恩田健(九大教授)
九大翱笔贰搁础では、世界に先駆けて罢础顿贵材料の创製を进めてきました。罢础顿贵材料は翱尝贰顿の発光分子として优れた特性を発挥することから第叁世代の発光分子として位置づけられ、さらに触媒机能やバイオセンシングまで幅広い応用が期待されています。また、光化学の学理としても、ゼロギャップ近傍の物理化学の解明が待たれており、メカニズムの解明は有机分子の新たなポテンシャルの解明に繋がります。我々の研究チームは、本研究の成果をもとに、光化学から量子デバイスへの可能性も开拓して行きたいと考えています。(安达千波矢教授)
用语解説
(※1) 発光の過渡減衰
励起状态にある分子は指数関数的に脱励起され、基底状态に戻る。このときの発光强度の时间依存性が过渡减衰曲线であり、强度が1/别に减衰するまでの时间が発光寿命と定义されている。
(※2) 熱活性化遅延蛍光(TADF)材料
TADF(Thermally Activated Delayed Fluorescence:熱活性化遅延蛍光)は1920年代に発見された発光現象で、2012年に安達千波矢教授が発光量子収率100%でTADFを示す材料(TADF材料)を開発し、OLEDの発光材料として有用であることを示して以降、世界中で研究が行われている。
论文情报
タイトル:Temperature dependency of energy shift of excitonic states in a donor–acceptor type TADF molecule
著者名:Youichi Tsuchiya, Keito Mizukoshi, Masaki Saigo, Tomohiro Ryu, Keiko Kusuhara, Kiyoshi Miyata, Ken Onda, and Chihaya Adachi
掲載誌:Nature Communications
DOI:
お问合せ先