伊人直播app

Research Results 研究成果

云を构成する水と氷の比率が北极温暖化に影响するメカニズムを解明

?温暖化予测?异常気象予测の高精度化に期待?
総合理工学府修士課程1年 / 応用力学研究所
中西 萌々花 氏 / 道端 拓朗 准教授
2025.04.29
研究成果Physics & ChemistryEnvironment & Sustainability

ポイント

  • 北极域は、世界で最も温暖化が速く进行している地域です。数値気候モデルは北极の温暖化を観测よりも过小评価する系统误差が知られていますが、その原因は未解明でした。
  • 世界各国で开発されている30の気候モデルの解析により、云粒と氷晶の割合が放射特性に影响することで北极温暖化の度合いを左右する、新しいフィードバック机构を解明しました。
  • 中纬度の気象现象にも密接に関わる北极気候を云の素过程から纽解いたことで、温暖化予测の高精度化に加え、异常気象の将来変化の理解にも贡献することが期待されます。

概要

全球平均の温暖化のペースと比较して、北极域は3?4倍の速さで温暖化が进行しています。北极気候は中纬度の异常気象の発生にも密接に関わっているため正确な温暖化予测が必要となりますが、数値気候モデル※1によるシミュレーションでは北极温暖化のペースを过小评価する系统误差が存在します。その原因として复数の要因が挙げられていますが、正确な理解には至っていませんでした。

九州大学大学院総合理工学府修士课程1年の中西萌々花氏ならびに九州大学応用力学研究所の道端拓朗准教授は、北极温暖化の过小评価バイアスの原因の一つに、云の内部构造の再现性が大きく関连している可能性を指摘しました。世界の30の気候モデルを解析した结果、21モデルが卫星観测よりも云中の氷晶割合を过大评価しており、そのようなモデルでは云が地表面を温める温室効果を系统的に弱く再现することを理论的に説明することに成功しました。

これまでの研究でも、云粒と氷晶が共存して构成される混合相云の相状态が温暖化によって変化することで、放射特性が変化する“云相フィードバック※2”の重要性は指摘されていましたが、太阳放射(短波放射)に対する影响に议论が限定されていました。本研究では、太阳放射がない极夜期のみを解析することで地球放射(长波放射)に対する云の影响を调査した结果、云粒と氷晶の比率によく対応する云の长波放射射出率※3によって特徴付けられる温室効果の度合いに、本质的な観测との误差が存在することを発见しました。これは、将来温暖化した际に氷晶が融解して液体の云粒に相変化する际にも、极めて重要なモデル误差の要因となります。短波放射に着目した従来の研究とは异なり、长波放射に対する影响に着目した云相フィードバックを、云の长波放射射出率に起因して駆动されるメカニズムを强调し“云の射出率フィードバック※3”と新たに名付けました。

本研究による発见により、北极温暖化の予测结果が気候モデル间で大きくばらつく原因の解明につながるほか、北极気候の再现性と结び付く中纬度の异常気象予测の精度向上にも寄与することが期待されます。

本研究成果は、Science Partner Journalsの国際学術誌「Ocean-Land-Atmosphere Research」に2025年4月29日(火)午後7時(日本時間)に掲載されました。

用语解説

(※1) 数値気候モデル
気温や风、降水などの世界の気候をシミュレートするための数値プログラム。全球をシミュレートする気候モデルは水平约1?程度の空间解像度で、数十年~数百年以上の长期スケールを计算します。

 (※2) 雲相フィードバック
温暖化によって、云を构成する粒子が固体(氷晶)から液体(云粒)に変化することで生じるフィードバック机构。氷晶が融解し、より粒径が小さく光学的に厚い云粒に相変化すると、太阳放射をより効率的に反射することで温暖化を相杀しようとする负のフィードバックとして働くことが知られています。

 (※3) 雲の長波放射射出率、雲の射出率フィードバック
云が地球放射(长波放射)をどれくらい吸収?射出できるかを表す、0?1の范囲で定义される指标。电磁波をよく吸収できる物体ほど射出もできる特性があり(放射エネルギーにおけるキルヒホッフの法则)、全ての波长の放射を完全に吸収?射出できるような理想的物体を黒体といいます。长波波长において、云はある程度の云水量を持つと黒体に近い「不透明」な放射特性を持ちますが、极域に形成される薄い混合相云では「半透明」な放射特性を持ちます。云の射出率フィードバックは云相に依存するという意味で、(※2)の云相フィードバックと共通しますが、云相フィードバック(负のフィードバック)は太阳放射に対する影响で特徴付けられるのに対して、射出率フィードバック(正のフィードバック)は地球放射に対する影响を指す点で全く异なるフィードバックメカニズムです。

云の射出率フィードバックの概念図:云中に(补)氷晶が多く云の长波放射射出率が小さい场合は长波放射の吸収?再放射が弱いために温室効果も弱い一方、(产)云粒が多く云の长波放射射出率が大きい场合は温室効果が强くなる。地球温暖化に伴い(补)から(产)の状态に相変化が生じると、温暖化を加速させる正のフィードバックとして働くと考えられる。

论文情报

掲載誌:Ocean-Land-Atmosphere Research(Science Partner Journals)
タイトル:How does cloud emissivity feedback affect present and future Arctic warming?
著者名:Momoka Nakanishi and Takuro Michibata
顿翱滨:

お问合せ先